だれかに話したくなる本の話

年収1000万でも手元にお金が残らない人の問題点とは

高収入の一つの目安となるのが「年収1000万円」。
ビジネスパーソンにとって、誰もが頭の片隅にある数字である。
しかし、年収1000万円を得るようになると、果たして生活は豊かなのだろうか。もちろん、それは人による。そしてそのほとんどが「マネーリテラシー」にもよるのである。

■高収入でも手元にお金が残らない人

今の日本の課税制度は、収入の高い人に対してあまりにも厳しくなっています。
高所得者を狙い撃ちにするような税制改正が続き、年収1000万円の人でも税金や社会保険料を引いた手取りは700万円台前半となっています。

『脱・高収入貧乏』(永田智睦著、幻冬舎刊)は高所得者をめぐるこんな実態を指摘。高い収入を得るためには努力が必要な一方で、思い描いたような生活を送れていない、としている。

実際、日本の年収1000万円の人は驚くほど資産を築けていない。「老後2000万問題」が取り沙汰されているにもかかわらず、令和3年に行われた金融広報中央委員会の「家計の金融行動に関する世論調査」〔二人以上世帯調査〕によると、年収1000万円~1200万円の二人以上世帯の金融資産額は資産2000万円未満が約59.2%、1000万円未満が35.4%となっている。年収からすると、もっと多くの資産を築いていてもおかしくないはずだ。

その理由はさまざまだ。外食や旅行、子どもの教育費などで出費がかさむケースもあれば、仕事が多忙で、必要最低限のマネーリテラシーを身につけておらず、怪しい儲け話に乗って損をしてしまったケースもある。もちろん、収入の多さから家計意識を持たずに使いたいだけお金を使ってしまっているケースもある。

■ボーナスでゆるんだ財布のヒモは何ヶ月も締まらない

しかし、いかに高所得者でもお金ついてのリテラシーは必要。資産を残したかったら、高所得者こそお金との向き合い方を考えるべきだろう。

たとえば、会社勤めの高所得者であれば、ボーナスは高額になる。このボーナスによって金銭感覚が狂ってしまう人は案外多いのである。ボーナスが近いからということでゆるんだ財布のヒモは、翌月になっても急に締まるものではない。なんだかんだでボーナス支給されたあとも浪費を続けてしまいやすい。ボーナスは「臨時収入」ではなく、あくまで「給与の一部」という意識を持つべきだ。

■証券会社の勧める投資商品に飛びつくのは危険

現金を遊ばせておかずに投資して運用しようという考えは、特に高所得者には一般的だ。ただ、マネーリテラシーがないことにより、証券会社の担当者に勧められた金融商品を調べもせずに買ってしまうケースは多い。

例えば最近ではつみたてNISAのように「長期・分散・積立」という安定的な資産形成に役立つ特徴を備えた金融商品に手軽に投資できるようになっているが、本書によるとこうした金融商品を証券会社は勧めようとしないという。

これはつみたてNISAは手数料が安く、証券会社の収益になりにくいからだ。証券会社が勧めてくる金融商品は「顧客にとっていいもの」ではなく「手数料を多くとれるもの」だと心得ておくのが正解だ(ただ、つみたてNISAもなんとなくやっているだけでは意味がない)。

悪質なのは、投資会社の社員自身も複雑すぎて理解できない商品を、あたかも有利な商品に見せかけて勧めてくることがある点だ。「仕組債」のように、デリバリティブという特殊な金融手法が使われ、金融のプロである証券会社の社員でも理解するのが難しい商品を「特別な商品」といううたい文句で販売する金融機関もある。もちろん、必ずしも悪いわけではないが仕組債の手数料は実質5~7%、ものによっては20%を超えるものもあり、高いのが基本である。

投資に関心を持つのはいいが、証券会社を含め保険会社や銀行、不動産会社のいいなりにならず、自分で調べて、選択する姿勢が大切だ。

本書では高所得者向けにお金との向き合い方や、節税、家計のやりくり、そして投資についての考え方などが、フィナンシャルプランナーの視点から解説されている。

収入はそこそこいいはずなのに、なぜか手元にお金が残らない、資産も少ないという人は、本書をきっかけにお金との付き合い方を変えてみてはいかがだろうか。また、年収1000万を目指す人にとっても、本書を通じてこの収入帯の現実を知ることができるはずだ。

(新刊JP編集部)

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