成功投資家が語る負けない資産構築のポイント
インフレによって通貨の価値は目減りし、銀行預金だけでは将来が心もとない。しかし物価高騰で投資に十分なお金を回せない。長く続いたデフレ経済がインフレに転じたことで、さまざまな問題が生まれている。
このインフレがどこまで進むのかわからないし、リーマンショックのような世界的な金融危機が来ないとも限らない。この不安定な時代に私たちはどう備えるべきなのだろうか。 る。
『2035年 増える富・消える富の見分け方 インフレ地獄を生き抜く資産戦略』(KADOKAWA刊)(小林大祐著、KADOKAWA刊)はやがてくる「グレートリセット」に触れたうえで、そこから資産を守り、富を築くチャンスに変えるために必要な考え方と知識を授ける。
今回は著者の小林大祐さんにお話をうかがい、富裕層がすでに始めているという次の危機への備えと、中流層の資産構築に必要なポイントについて語っていただいた。
■富裕層はグレートリセットへの備えをすでに始めている
――『2035年 増える富・消える富の見分け方 インフレ地獄を生き抜く資産戦略』で予測されているグレートリセットについて、詳しくお聞かせ願いたいです。未来を予測するのは難しいですが、起こりうるシナリオをお聞かせいただければと思います。
小林:歴史を振り返ってみると、「グレートリセット」と呼ばれるもの、つまり世界経済を揺るがすような金融ショックは定期的に起こっています。記憶に新しいのはリーマンショックですよね。もっとさかのぼると世界恐慌がありました。
こうした金融ショックは人類が文明を発展させるなかで培ってきた資本主義を運用する際に必ず起こるものです。だから今後も起こります。どんなシナリオでそれが起こるかを言い当てるのは難しいですが、一つ言えるのは、過去のグレートリセットはいずれもアメリカで発生して、世界に波及したということです。もしかしたら次のグレートリセットもそうかもしれません。それに対して何の備えもしないで生活していると、積み上げてきた資産が崩れてしまいますよ、という警鐘を鳴らす意味でこの本を書きました。
――いつやってくるかわからないが、資本主義の構造上いつか必ずくる金融ショックに対して、富裕層が行っている備えについても書かれていましたね。
小林:富裕層の中でも上の人たち、いわゆる超富裕層と呼ばれる人たちの行動規範は資産を増やすことより守ることですから、こういう時の備えへの動きは速いですよ。資産をあちこちに分散させるのは当たり前として、食料を自給できるように北海道に農地を買ったり水源地を買ったりしている人もいますし、「ファイブフラッグ理論(「国籍」「資産運用」「居住権」「事業(法人設立)」「余暇」という目的別に5つの拠点を持つこと)」に基づいてドバイに住所を置いて各地を渡り歩いている人もいます。こうした人々の行動に根付いた資産防衛への意識は一般の方々にとっても学びになるのではないかと考えています。
――「資産といっても株が少しあるくらい」という人が日本人の大半だと思いますが、今のお話を踏まえるとそういう人であっても資産は分散させるべき、ということですね。
小林:そうですね。地政学的に転機を迎えている時代ですから、どんな資産であれ一か所に集めてしまうことは極めて危険です。株しかないのであればセクターを分けたり、国を分けたりすることは必要でしょうね。
――本書で読者に伝えたいメッセージとしては、グレートリセットのような「いつくるかは誰にもわからないけども、近い将来来る可能性が高い危機」への備えをしておこうということになりますか?
小林:まずは、自分にとっての幸せの定義を決めてもらいたいということですね。もちろん幸せの定義は人それぞれで、資産を何千億と持っていても幸せを感じられない人もいれば、収入がさほどなくても幸せな人もいます。
資産を作るにしても守るにしても、前提になるのは個々人の幸せの定義です。それを見失ってしまうと資産があっても幸せを感じられないということになってしまう。まずは自分にとって何が幸せなのかを定義して、それを守るために積み木を積み上げるがごとく、起こりうる危機に備えていただきたいというのが私からのメッセージです。
――グレートリセットの特性として挙げられているのが「通貨の価値の消滅」です。これは現在のインフレが今後さらに進行していくことで起こりうるとお考えですか?
小林:インフレはひとつの局面にすぎません。世界を見渡すと中国のようにデフレの国もあるわけじゃないですか。それよりも、地政学的なところから世界経済が一変してしまう可能性についてこの本では注意を呼びかけています。たとえば、中国が本当に台湾に侵攻して、台湾の基幹産業である半導体を握られてしまったら、世界経済全体がおかしくなりますし、もしかしたら既存の金融システム自体が機能しなくなる可能性もゼロではない。今の時点ではありえないと思うことも今後起こりえますし、過去には実際に起こってきたんです。
――さきほどお話しされていたリーマンショックなどがその前例ですね。
小林:そうですね。歴史を辿れば金本位制が終わった時から、通貨の価値の裏付けは信用だけになったわけで、その信用が崩れた時から通貨の価値は滅びていきます。先ほどお話しした、富裕層が水源や農地を買っているというのはこの事態への対策なんです。お金に価値がなくなっても生存に必要なものを現物で保有していれば資産は守られるので。世界がどうなっても価値が残るものにお金を移す、ということです。不動産を買うのもその一環です。
――ここ最近の社会の流れを見ると、世の中が平時から乱世に移った感があるのは確かです。こうした時代の資産構築で大切になるのはどんな点ですか?
小林:これはすごくシンプルで「人口が増えるところにロングで張る」ということだけですね。「S&P 500」はまさにそれで、人口が増えるところに拠点を作って価値提供を行って業績を上げ続けている会社を取り揃えているわけです。こういうところにロングでお金を入れ続けていくというのはひとつの手ですし、まとまった資金があれば長期的に人口が増えている場所に不動産を買うという選択肢もあります。
ステージによって具体的なやり方に違いはありますが「人口が増えるところにロングで張る」という行動規範に則って投資していくのがすべてだと言っていい。もちろん、資金を分散させるためにセクターを分けたり通貨を分けたりすることも大切です。
(後編につづく)
