だれかに話したくなる本の話

狂気と無垢を見つめる作家・坂口恭平 最新作『しみ』に広がる純粋な青春を語る

坂口恭平さん

「坂口恭平」という人について、一言で説明するのはおそらく不可能だ。書き手、建築家、踊り手、歌い手、話し手、絵描き、冒険家、芸術家、フィールドワーカー、「新政府初代内閣総理大臣」という肩書きもある。

また、坂口さんの携帯電話番号は晒されていて、いつでも電話をかけることができる。この取り組みは「新政府いのっちの電話」といい、自殺者0を目標に希死念慮に苦しむ人たちとの対話を続けている。

坂口さんがやっていることは、「坂口恭平」である。何にもカテゴライズできず、表現の世界を縦横無尽に動き回っているのだ。

そんな坂口さんに自身の本について話を聞くと、「だったんでしょうね」という言い回しをよく使う。自分が書いたものについて語っているはずなのに、まるで自分とは別の書き手が書いたかのような――もっと言えば、自分を切り離しているような言い方をするのだ。

しみ

しみ

オルタナティヴ文学の旗手・坂口恭平が放つ、傑作青春小説。