だれかに話したくなる本の話

人を縛り強要する「物語のマイナスの側面」とは? 星野智幸『焔』があぶり出す日本の病巣(1)

『焔』(新潮社刊)の著者、星野智幸さん

ある種のフィクションは、その内容や質にかかわらず現実社会を映し出す。 風刺や未来への警鐘として、または励ましとしてなど、どのような意味合いとして受け取るかは読み手に委ねられるが、いずれにしても読後に自分の暮らす社会や自分の生きる世界を思い出さずにはいられない。そんな物語があるのだ。

小説家・星野智幸さんの最新作『焔(ほのお)』(新潮社刊)はまさしくそんな作品集。星野さんはどのような意思を持って、どこか陰鬱でまぎれもなく不寛容な日本社会を新作の舞台に選んだのか。そしてこの舞台は「未来の日本」なのか、それとも作家から見た「今の日本」なのか。

社会と創作を巡るそんな疑問を星野さんご本人にぶつけたインタビュー、その前編をお届けする。(インタビュー・記事/山田洋介)

焔

9つの物語を包みこみ、生き地獄のような世界に希望を灯す、かつてない小説体験! 親の介護に追われる男は謎の団体に父親を託し潜入取材を始め、人間がお金となり自らを売買する社会で「ぼく」が見たものとは。真夏の炎天下の公園で、涙が止まらない人で溢れかえる世界で、自分ではない何かになりたいと切望する人々が、自らの物語を語りはじめたとき――。地上に生きるすべてのものに捧ぐ著者渾身作。