だれかに話したくなる本の話

別々の道を歩むすべての人たちに「幸あれ」とだけ伝えたいという話

提供: 新刊JP編集部

こんにちは、金井です。

修学旅行で同じ部屋だった人。
急に部活をやめてしまった人。
たまたま観に行ったライブに出てきたミュージシャン。
1回寄ってその後潰れたバーの店員。
急に蒸発して会社を辞めていった同僚。
以前のアルバイト先の上司。
不祥事を起こしてテレビの中から姿を消したアイドル。

私たちの人生の前を、様々な人が横切り、そしてその視界から消えていきます。

そして、自分の前からいなくなった人のことを思い出すこともあれば、忘れ去ってしまうこともあります。
死んでしまった人のように扱うこともあるし、生きている前提で「元気にしているかなあ」と思うこともあります

それは同じように、彼らから見れば僕は消えていった存在であります。
彼らは僕のことをもう死んだ人のように思っているかもしれないし、「あいつは元気にしているだろうか」と思っているかもしれない。
お互いに忘れ去っているかもしれない。

その意味で、「mixi」の登場は衝撃的なものがありました
交わるはずのなかった、離れ離れになった人間同士の関係ですら、再度くっつけて**「離れさせないようにした」**わけですから。

「mixi」をほとんど使わなくなった今でも、「Facebook」に場を移して、その関係は続いています。
もし「Facebook」がなければ、もう数年会っていない大学院時代の友人の誕生日に「おめでとう」とコメントはしなかったでしょう。

これはある側面で素晴らしいことだと思います。
でも、全面的に良いことなのかと問われたら、必ずしも「イエス」とは答えられないのが本音です。
もしかしたら過去に自分を縛り付けるという意味では、悪いことなのかもしれない。

『ボクたちはみんな大人になれなかった』(新潮社刊)の作者である燃え殻さんはインタビューで次のように話しています。

――そう考えると、SNSは不思議な媒体です。決して交わることのなかった2人の人生を再び交差させるわけですから、なんだか物語性があります。

燃え殻: 関係を終わらせてくれないですよね。本当はだんだんと離れていって「そういえばあんな人もいたな」と、それでいいはずなんです。でも、しばらく顔を合わせていないのに「いいね」を押し合うし、「誕生日おめでとう」と言い合う。それが毎年ずっと続いていくというのは奇妙な感じがします。

bestseller's interview 第92回 燃え殻さん

この燃え殻さんの言葉に、僕はいたく共感を覚えました。

大切なのは、相手の人生のリアルな状況を知ることではなく、
お互いの目の前から去ってしまった2人が、その先もずっと自分の人生をただ生き続けていくということが大切だと思うのです。
誰かの人生を気にして覗いて笑うくらい暇ならば、自分のことをちゃんとやれ、と

必要ならばいずれその道は交わるでしょうし、そうでなければ相手の人生を覗き見することなく終わるでしょう。

ナイロン100℃という劇団の舞台**『わが闇』**のエンディングで、主人公の映画監督が登場人物のその後の人生に触れて、こんなセリフを言います。

「一つの山を乗り越えたかどうかを知ったところでたいした意味はありません。また次の山がやってくるだけです。大切なのは、この人達が、これから先も生きていったってこと」

一つのシーンが終わった後も、そこに出てくる登場人物の人生は続いていきます。
それが何よりも大切な事実であり、それ以上知ったところでたいした意味はないのでしょうね。

というわけで、志田未来さんの最新写真集『AM/PM』が発売されました!拍手!

25歳の誕生日に発売された本作ですが、志田未来さんの自然体の表情が魅力的です。

とてもいい写真集なので、ぜひチェックしてみてください。

今日の体重(5月18日計測)
身長:171.5cm
体重:68.5kg
BMI:23.3
体脂肪率21.6%

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金井元貴

1984年生。「新刊JP」の編集長です。カープが勝つと喜びます。
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audiobook:「鼠わらし物語」(共作)

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