だれかに話したくなる本の話

2020年までの「乱高下」とその後の「バブル」を乗り切る資産形成

大手銀行の普通預金の利率は年0.001%という非常に低い水準だ。比較的金利が高いと言われていたインターネット銀行も近年ではその水準に足並みを揃える傾向にある。

銀行に預けているだけでは資産形成にはつながりにくい。そこで投資を考える人は多いが、激動の時代にどのような投資をしていくのがよいのだろうか?
国内外の経済状況や機関投資家の動きを熟知し、経済動向を的確に見抜いてきた実績を持つリンジーアドバイス株式会社代表取締役社長であり、『乱高下あり! バブルあり! 2026年までの経済予測』(集英社刊)の著者、渡辺林治氏に2020年代の個人の資産形成について語って頂いた。

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個人の資産形成で一番大切なことは、長期で取り組む姿勢です。
そこで知っておくべき手法が、ポートフォリオ構築と管理です。ポートフォリオとは、株式や債券などいくつかの資産を組み合わせて保有するものです。

自分に合った資産形成のポイントは、それぞれの方が、どれだけ時間的にも価格の変動幅としてもリスクが取れるかどうか。これを一度考えてみる必要があります。

20代30代の方であれば、リターンがマイナスの時期があったとしても、後で取り戻すことができやすいです。そう考えると比較的リスクをとった資産形成のポートフォリオを組むことができます。

一方で、定年退職が近づいてきている方であれば、あまりリスクを取らず、期待リターンが少なくとも安全なポートフォリオに組み替えていく必要があります。こうしたことをご自身で考えつつ、家族や周りの人とも相談してほしいと思います。

**具体的なポートフォリオのひとつの例として、国民の年金を運用しているGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)は参考になります。**GPIF は1.7%のリターンを目標にしていて、国内債券28%、日本株25%、外国株25%、外国債券14%という構成になっています。

このポートフォリオは、年率1.7%を目標にしながら3.39%という実績を出したものです。個人の資産形成で年率2~3%のリターンを狙うのであれば、これは非常に参考になります。 つまり、日本株と外国株で4~5割、外国債券1~2割でポートフォリオを構築するわけです。

そして、いざという時のため待機現金も3割ほど持っておくことです。

世の中には「必ずこうなる」ということはありません。想定外のことがよくあります。「上り坂、下り坂、まさか」なんて言いますが、「まさか」という思わぬ事態は次々と起こるものです。そういうときに対応する体力を持っておく。だから、無理せず余裕を持ったポートフォリオを組んでおくことが大切だと私は思っています。

もう少しリターンを高めに3~5%を狙うのであれば、日本株と外国株で6~7割、外国債券1~2割。残りを待機現金にしておくというのも一つの考え方です。
ただし、乱高下が見込まれる時期なので、今はあまりリスクを取らず、できるだけ下がった時に、日本株や海外株のウェイトを増やせる準備はしておいたほうがよいでしょう。

**乱高下とバブルが見込まれる今、個人の資産形成をする上でまずやっておくべきことは「方針」を決めることです。**自分がどれだけのリターンを、どれくらいの年月で実現していきたいか、ということを持っておくということです。
次に、その方針に基づいて、具体的な「作戦」を立てていくこと。そして、それを「練習」することが大切です。

練習というのは、予算のうち5%くらいの少ない資金で買ったり売ったりをやってみる、ということです。
今は小額からでも資産形成ができます。いきなり大きなお金を動かすのではなく、小さくやってトライ&エラーを繰り返し、小さな失敗から色々なことを勉強する。そうやって練習して慣れていくうちにわかることも多くなり、「これも知っておかないといけない」「このことについてもっと知ろう」ということがたくさん出てきます。

安心した老後を迎えるためにはどうするべきか。それには練習と勉強しかありません。そうやって積み上げた知識水準や経験を、次の世代にもつなぎ、親の世代にも伝える。そうやって、激動する時代を皆で手を携えて乗り越えていくことが大切だ、と思っています。

(了)

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この記事のライター

大村佑介

大村佑介

1979年生まれ。未年・牡羊座のライター。演劇脚本、映像シナリオを学んだ後、ビジネス書籍のライターとして活動。好きなジャンルは行動経済学、心理学、雑学。無類の猫好きだが、犬によく懐かれる。

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