だれかに話したくなる本の話

サッカーの名監督に学ぶ“信頼”を生むマネジメント

2017-18シーズンをもって、イングランド・プレミアリーグのアーセナルを22年間指揮していたアーセン・ベンゲルが退任した。しかし、これほどの長期政権は欧州のプロサッカーリーグにおいては珍しい。結果が出ない監督は解任され、すぐに次の監督が出迎えられる。シーズン中に2度監督が変わるチームも見受けられる。

そんな厳しいトップリーグの世界で、8年にわたってイタリアのACミランの監督を務め、多くのトッププレイヤーたちとミランの黄金時代を築き、欧州各国のビッグクラブを率いている監督がいる。カルロ・アンチェロッティだ。

『戦術としての監督』(カルロ・アンチェロッティ著、豊福晋翻訳、KADOKAWA刊)では、カルロ・アンチェロッティ監督の思想と哲学、一流クラブから監督に招かれ続ける理由を紹介した一冊である。

2018年5月からはイタリア・セリエAのSSCナポリの監督を務めるアンチェロッティがどれだけ選手や周りの人たちから信頼を得ているかは、本書に寄せられた多くのトッププレイヤーや監督たちからのコメントを読むとわかりやすい。

例えばクリスティアーノ・ロナウド(ユヴェントス)は、「我々はなぜみんなが彼のことを称賛するのか分かってきた。僕の考えでは、これは部分的には彼の人との接し方が非常に謙虚なためだと思う」と語る。

また、エゴイストモンスターと呼ばれるズラタン・イブラヒモビッチ(LAギャラクシー)は「僕はこれほどの人間関係を監督との間に築いたことはなかった」と述べ、「僕にはクラブの友人のマクスウェルがいて、彼とは恐らく人生の残りの期間ずっと連絡をとるだろう。そしてまたカルロがいる。僕は今日も彼と話すだろう。彼は僕の友人だから」と信頼を寄せる。

他にも、デビッド・ベッカムやジョン・テリー、パオロ・マルディーニ、サー・アレックス・ファーガソンなど、多くの選手や対戦相手がアンチェロッティについて語っている。

選手やコーチ、周りの人に親身に接し、忍耐強く、平静。もちろん、戦術も重要であり、一番にクラブの文化を大切にする。
誰とでも喜んで話に耳を傾ける時間をつくり、信頼関係をつくる。派手さはないが、多くの同僚が語るように人間性に優れていることが本書を読むとわかる。そして、彼自身のやり方で、結果も残してきた。

アンチェロッティのリーダーとしての考え方や人との接し方は、サッカーやスポーツだけでなく、ビジネスにおいても大いに参考になるはずだ。

(新刊JP編集部)

戦術としての監督

戦術としての監督

「選手こそが戦術」と話す、その哲学と具体的手法。

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