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「生き物は死ぬと土にかえる」 その驚くべき過程とは?

「生き物は死を迎えると土にかえる」というのは聞いたことがあるだろう。
では、具体的に「土にかえる」とはどういうことなのか?

実はただ消えてなくなるわけではなく、生き物が土にかえるプロセスのことを「分解」という。

「分解」の謎を説明してくれる一冊が『生き物はどのように土にかえるのか』(大園亨司著、ベレ出版刊)だ。本書は生き物の死骸が分解されるプロセスを見ながら、生き物の死骸を利用する動物や昆虫、カビやキノコなどの菌類、細菌などの生き方を紹介している。

遺体はどうやって分解され、土にかえるのか。

1971年にケニアのツァボ国立公園で死亡したアフリカゾウの遺体が「土にかえっていく」様子を4年間に渡り記録したのが、オックスフォード大学のコーエ博士だ。 遺体が分解されていくプロセスは3つの段階に区分することができるという。

まずは第1段階だ。これは死亡してから最初の4日間で、遺体がふくれるのが特徴だという。
動物は死ぬと24時間以内に、からだを構成する細胞が分解をはじめる。「自己消化」「自己融解」と呼ばれるプロセスで、ガスが発生する。皮膚で覆われているため、腹部からガスがたまり、3日ほどで胸や頭、尻、足に広がっていく。

続く第2段階では、ふくらんだ遺体に皮膚が耐え切れなくなり、裂け目が入りはじめる。そこからガスが抜け、腐敗液が流れ出る。死後6日ほどになると、体内のガスが抜け切り、腐敗液は遺体周辺に染み込む。
そして、遺体のなかでも特に柔らかい筋肉や脂肪などの組織がハゲタカやハイエナなどのエサとなり、24日目までにはほぼ完全に消失する。

最後の第3段階。柔らかい組織が食べ尽くされ、遺体の乾燥が進んでいく。土に染み込んだ腐敗液は、光沢のある「かさぶた」のような状態になり、それを栄養に昆虫が大量に発生する。硬い皮膚もカツオブシムシの幼虫のエサになり、数か月で食べ尽くされて消失する。
最後に残るのは骨だが、こちらは10年以上にわたって残存。アフリカゾウのような大型の動物では、40年近く残ることもあるという。

そして、分解の過程でからだの一部は気体になり、大気中に拡散。水分の一部は、土に染み込み、腐肉動物や微生物のからだになる。この3つの段階を追うだけでも、動物は死んでただ土にかえるだけではないのがよくわかるだろう。

著者の大園亨司氏は、「生き物はすべて地球の成分でできています。土にかえるというのを再び地球にかえる、ということと同じ意味だと考えれば、私などは何となく腑に落ちます」(p.71より引用)と述べている。

本書を読むと、生き物の死と分解を知ることで、いのちが巡っていることを実感できる。あまり触れる機会のない生き物の「分解」の世界をのぞいてみてはどうだろう。

(新刊JP編集部)

生き物はどのように土にかえるのか: 動植物の死骸をめぐる分解の生物学

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知的好奇心をくすぐる一冊!

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