だれかに話したくなる本の話

依存症の親とどう向き合うか 一木けいが新作で描いた「家族」

『全部ゆるせたらいいのに』(新潮社刊)の著者・一木けいさん

両親や兄弟姉妹、息子に娘。
家族だからって、いつまでもいい関係でいられるとは限らない。
「ソリが合わない」程度ならまだいいが、「多額の借金を抱えて、金の無心ばかりしてくる親」や「いつまでも働かずに自立できない子ども」など、身内であるがゆえに振り回され、見捨てることもできないという悩みを抱える人は決して少なくないはずだ。

一木けいさんの新作『全部ゆるせたらいいのに』(新潮社刊)は、こうした身内との付き合い方を通して家族のあり方を問う。酒に溺れては暴力を振るう父に育てられた娘は、結婚し、子どもを持った今、アルコール依存症に心身を蝕まれた老年期の父とどう向き合うのか。この作品が生まれた背景と、そこに込めた思いについて、一木さんにお話をうかがった。

全部ゆるせたらいいのに

全部ゆるせたらいいのに

あきらめて生きる癖がついた。明日何が起きるか予測がつかない、それがわたしの日常だった。その頃見る夢は、いつも決まっていた。誰かに追いかけられる夢。もう終わりだ。自分の叫び声で目が覚める。私は安心が欲しいだけ。なのに夫は酔わずにいられない。父親の行動は破滅的。けれど、いつも愛していた。どうしたら、信じ合って生きていくことが出来るのだろう―。