新刊JPトップ > 特集 > 橋本 陽輔『社長が知らない 秘密の仕組み ~業種・商品関係なし! 絶対に結果が出る「黄金の法則」~』
  • 書籍情報
  • 社長が知らない 秘密の仕組み ~業種・商品関係なし! 絶対に結果が出る「黄金の法則」~
  • 著者:橋本 陽輔
  • 定価:¥1,470 (税込)
  • 出版社:ビジネス社
  • ISBN-10:4828414541
  • ISBN-13:978-4828414546
  • 発売日:2008/10/22

著者インタビュー

1、本書を執筆するきっかけは?

以前、コンサルティング会社に在籍していた時に、非常に業績が良かった企業がある タイミングで失速するというケースに多く巡りあったんです。 業績が良いということは当然、集客に関連するDM(ダイレクトメール)などの クリエイティブや顧客の対応も良い会社なんですが、そういった会社が次々に失速してしまったのです。 この原因は、もちろん、いろいろな要素が絡み合っているんですが、 その中でも本質的な「本当の理由を知りたい」と思い、答えを探していました。

そんなときに出会ったのがやずや大番頭の西野博道さんが作った「顧客ポートフォリオマネジメント理論」でした。 この顧客ポートフォリオのお話を聞いたときに「失速の本当の理由」が腹に落ちたんです。 また、この理論を活用することで業種を問わず助かる企業が多数あると思いました。 そこで、西野さんに顧問をお願いして研究会を発足することにしました。 それが、「リピート顧客倍増実践会」です。そして会員数も増えた段階で本を出してみませんか? とのお声がかかり、本書が誕生しました。

2、「顧客ポートフォリオマネジメント理論」とは どのような理論なのですか?

本書では「興味深く読めるように」との配慮から、 RFM分析との対比で顧客ポートフォリオ理論が書かれていますが、じつは、少し違うとらえ方をする必要があります。 今回は、本質的な部分をお話したいと思います。

顧客ポートフォリオマネジメントとは、けっしてRFM分析のアンチテーゼではありません。 一言でいえば、顧客とのコミュニケーションの質をはかるレントゲンのようなものです。 健康診断でいえば、LTVは血液検査で、顧客ポートフォリオマネジメントはレントゲンです。 (顧客ポートフォリオとLTVの関係を健康診断で例えた説明が以下のウェブサイトに掲載されていますので是非見てみてください)

企業の具体的な健康具合をはかった診断結果が顧客ポートフォリオチャートとして出ますので、 このチャートを見ながら、具体的な対策を打てます。つまり毎月のようにチェックして、 体質改善にはげむための指標が顧客ポートフォリオなのです。

3、「顧客ポートフォリオマネジメント理論」を開発された西野博道さんはどのような方ですか?

一言でいえば、実践家だと思います。 こんな話があります。ある経営者がセミナー後に西野さんに「やずやさんの業務システムすべてを 、おひとりで作られたのですよね。僕には、自社のシステムの構築を実現するのは無理かもしれません」と 愚痴をこぼしたそうです。すると西野さんは、「(私も)十数年かかりました。 結局、やるか、やらないかです。聞いても、ほとんどの方が実行されないです」と ドライとも思えるアドバイスをされたそうです。

わたしも、いつも西野さんの言葉から気付かされるのですが、 ノウハウや手法や流行といったものに「乗る」から業績が上がるのではなく、 日々の実践の積み重ねが業績に現れてくる、というのが真実だと思います。 それを実際の行動を持って指し示してくださっている方が西野さんだと思います。

4、本書では第4章で「やずや」の例が書かれていますが、その特徴はどのようなところにあると思いますか?

これは3つあります。
1つ目は、「お客様視点のマーケティング」だということです。 本書にもありますが、「顧客ポートフォリオはお客様から見た自社の成績表 」という言葉が象徴するように、お客様を変えるのではなく、自社が変わるのだ、 というイズムを持って実践されています。

2つ目は、「知」と「情」といいますか、数値とイズムの両方をバランス良く実践されています。 たとえば本書の顧客ポートフォリオのようなデータを重視し、正確な状況を把握することが「知」だとすれば、 「情」の部分として、DMやお電話など顧客と接する場面では「どれだけ一人のお客様を大事にするか」 という視点を持って行われています。たとえば、これはマーケティングから外れますが、 顧客対応では、すべて自社で対応し、電話の前でおじぎを実際にするくらい 丁寧に対応するのだということが教えられています。

3つ目は、さきほどの点にも関連しますが、顧客ポートフォリオにも象徴されるような 「継続性」に重点をおいている点です。「どれだけ永い期間、お付き合いいただいているか?」 ということに重点を置いているので、「売って、それで終わり」ということがないのが特徴だと思います。

5、本書の帯には現在、顧客ポートフォリオを多くの企業が取り入れはじめていると書かれていますが、 何故、今、受け入れられているのでしょうか?

この不況下で新規客の集客が難しくなったことが最も大きい要因だと思います。 本にもありますが、新規集客のコストが10年前の約10倍のコストがかかるようになったと いうデータもあります。そのために既存客の維持という視点が改めて見直されるようになってきたのでしょう。

6、本書は図表やデータが多く掲載されており、とても分かりやすく読めると思いました。 本書を執筆するにあたり、最も工夫した点、気を使った点はどのようなところですか?

顧客ポートフォリオ理論の一番のネックは、「複雑に感じてしまう可能性がある」ということでした。 そこで脳がどのような状態であれば興味がキープできるか、あるいは納得できるかをベースの考えとして、 わたしだけでなく複数の方のご意見を聞きながら「わかりやすい」ものを作りました。 いわば作家が作った本ではなく、プロジェクトチームが作った本だといえると思います。

具体的にいえば、
1.エッセンスを凝縮し、意図してできるだけ薄く作りました。
これは、脳は「薄くて・軽い」本は「内容も簡単だろう」と判断する傾向があるからです。

2.リピート顧客倍増実践会の会員さんの社員さんの誰もが読んでもわかるように用語から表現まで、 できるだけ簡単でわかりやすいものを作りました。
特に新卒の23歳ぐらいの方やパートさんで マーケティングを知らない方でも、実践できるようにという配慮から構成されています。 具体的には、用語でいえば「よちよち客」は、やずやさんでは「未開発顧客」といわれているのですが、 このような用語一つ一つまで検討して作成しました。

3.左脳と右脳が同時に働くような構成にしています。
具体的には、ロジックや実証の数字などの左脳的部分や歴史的背景のストーリーの右脳的(感情的)部分を バランスよく構成したことで、どのタイプの方でも最後まで読み進められるものにしています。

4.さらに解決策の部分も、実際の行動レベルまでの回答を提示してある、ということも工夫した点です。

7、本書に書かれていることを実践する上で、最も重要なことは何だと思いますか?

まずは、考え方を理解するということでしょう。 たとえば、本書に顧客維持コストは、費用ではなく、投資と考えるという言葉が出てきます。 このように手法というのは、その背景にある考え方を理解しない限り「確信を持って実行する」ことはできないでしょう。

8、この世界的な不況の中で、多くの中小企業も非常に経営が不安定になっていると思われます。 中小企業が生き残っていくには、どのような策を講じればよいのでしょうか。

わたしがすべての答えを持っているわけではありませんが、 もし商品が、今の時代に存在する価値があるという前提でお話すれば、 まずは「不況が原因ではない部分」つまり顧客とのコミュニケーションがおかしかったことで 業績が落ちていた部分を見直すことからはじめる必要があるでしょう。 なぜなら、新規客が流出したことは、不況とは関係なく自社のコミュニケーションの問題だからです。 また、すべてのビジネスの出発点は、顧客しかありませんから、当然、顧客との関係性を見直すことが重要です。 不況は、そのチャンスなのだともいえるかもしれません。

9、本書をどのような方々に読んで頂きたいですか?

次の時代を積極的に切り開いていこうという気概をもった経営者、 あるいはマーケティング担当者の方に読んでいただきたいのは当然ですが、 昔の日本の良さの一つだった、できるだけ長期的な視点をもった「お付き合いの継続性」を重んじる経営スタイルが、 今後、日本の中小企業にも浸透していくなら、本書を出版した意味があったと思います。