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リクルート事件の真実 ― 葬り去られた稀代の経営者・江副浩正 ―について

2009年、民主党が自民党から政権を奪取し、第一党となった。この日本政治の歴史的転換は、後世に語り継がれていくことだろう。しかし、こうした日本政治の転換の萌芽を探る上で、必ずぶち当たるであろう1つの事件がある。それが1988年に発覚し、その後の日本政治・経済の構造の一変させたと言われる「リクルート事件」だ。

リクルート事件 江副浩正の真実

この事件は単なる政治家の汚職事件だけに留まるものではなく、メディア報道、司法に潜む多くの多くの問題を投げかける。 本ページでは事件発覚時のリクルート社会長で事件の中心人物であるとされた江副浩正氏が「リクルート事件」から21年目につづった『リクルート事件 江副浩正の真実』(中央公論新社)を手がかりに、リクルート事件の知られざる全容を暴き出し、そこに内包されている問題を考えるきっかけとするため制作した。


    〔本ページの内容〕
  • 「リクルート事件とは?」

    事件の抑えておきたいポイント、事件に関わった人物、事件の詳細な経過を掲載。


  • 「メディア報道が映し出した「虚像」」

    どうして江副氏は「犠牲にならなければいけなかった」のか? メディアの行き過ぎた正義感が生み出した悲劇とは。

  • 「『江副浩正』の姿に迫る」

    「江副浩正」という人物について、『リクルート事件 江副浩正の真実』の担当編集・横手拓治氏にインタビュー。そこから浮かび上がる稀代の経営者としての実像に迫る。

  • 「司法問題の穴―取調べの真実―」

    『リクルート事件 江副浩正の真実』の中で江副氏が激白した「現代の拷問」。なぜ、その様子を伝えるとともに、拷問のような取調べが行われる意味を考える。

  • 「書籍情報・リクルート事件資料集」

    『リクルート事件 江副浩正の真実』の書籍情報と、江副浩正氏の書籍・リクルート事件関連の文献・ウェブサイトを掲載。

リクルート事件の真実の概要

■リクルート事件とは? <事件のポイント>

  • 戦後最大級の汚職事件(贈収賄事件)といわれる
  • ・1988年6月18日、朝日新聞のスクープ報道によって発覚。その後、朝日新聞社をはじめとした新聞各社の報道を中心に世間が過熱していく
  • ・報道内容は値上がりが確実であった株式会社リクルートコスモス(現在はコスモスイニシア)の未公開株が、政治家や官僚、財界人らに「賄賂」として贈られていたというもの
  • ・与党議員が多く疑惑に絡んでおり、当時導入が進められていた消費税とともに、国会にて野党による本事件への激しい追及がなされた
  • ・「政界ルート」「NTTルート」「文部省ルート」「労働省ルート」という4つの贈賄ルートがあったとされ、それぞれのルートで立件された
  • ・この事件によって閣僚、代議士、事務次官、NTT元会長、そしてリクルート関係者12名を逮捕、起訴。全員が有罪判決を受ける
  • ・また、中曽根康弘をはじめ、竹下登、宮澤喜一、安倍晋太郎ら大物政治家も株を譲渡されていたことが発覚しており、事件発覚から1年足らずして宮沢喜一は大蔵大臣を辞任(1988年12月9日)、竹下登内閣は総辞職をしている(1989年6月3日)
  • ・しかし大物政治家たちはいずれも逮捕を免れており、核心部分の解明がないまま終結
  • ・この事件によって国民の政治不信を起こし1993年の「55年体制の崩壊」などに結びつくなど、その後の日本政治の大転換をもたらすきっかけとなった
<事件に関係した人物と判決内容>

リクルート事件 有罪判決者についての図表

リクルート事件経過

  1. 1988年6月18日 小松秀煕(ひでき)川崎市助役へコスモス未公開株(以下、コスモス株)譲渡の報道がスクープされる

    ★川崎市の企業誘致責任者だった小松秀煕助役がリクルート関連会社の未公開株を手に入れ、株価が急上昇した公開直後に売却、多額の利益を得たと報道。これに対し、小松助役は違法なことは一切ないとコメント。しかし、報道が「政治家が株に絡み多額の資金を得る」という論点にフォーカスされたことで国民の間には驚きと波紋が広がることになる。
    ★6月20日 小松秀煕、川崎市助役解職。

  2. 1988年7月6日 コスモス株が、中曽根康弘前首相、安倍晋太郎自民党幹事長、宮沢喜一蔵相の各秘書名義で売買されていたことが報じられる
  3. 1988年10月12日 江副浩正、衆議院税制問題等調査特別委員会の病床質問を受ける

    ★7月26日に江副は情緒不安定などから半蔵門病院に入院していたが、その間も症状は続き、自殺を考えるほど追い詰められていたと告白している

  4. 1988年11月1日 眞藤恒NTT会長へ、秘書村田幸蔵名義でコスモス株譲渡が報道される

    ★朝日新聞1面の見出しは「コスモス株譲渡 NTT会長秘書名義も」。NTTとリクルートの密接な関係が鮮明になったとリード文に書いている

  5. 1988年11月2日 池田克也公明党代議士、上田卓三社会党代議士へのコスモス株譲渡の報道
  6. 1988年11月3日 高石邦男文部事務次官へのコスモス株譲渡の報道
  7. 1988年11月7日 江副浩正を東京地検の樋渡利秋検事が半蔵門病院にて事情聴取
  8. 1988年11月15日 衆議院にリクルート問題調査特別委員会が設置される
  9. 1988年11月21日 江副浩正、衆議院リクルート問題調査特別委員会の国会証人喚問を受ける

    ★朝日新聞は夕刊一面で「警察関係者にも株譲渡」という見出しで大きく報道。さらに社会面で江副氏が証人席に座る前に一礼をする写真を掲載する。紙面の中では「警察関係に」という言葉が大きくクローズアップされており、また、証人喚問を聞いた識者からは「中身はさっぱり」「警察関係者発言には驚き」といった意見を寄せる。

  10. 1988年12月6日 江副浩正、式場英NTT取締役が衆議院税制問題等調査特別委員会の国会証人喚問を受ける
  11. 1988年12月9日 宮沢喜一蔵相が辞任
  12. 1988年12月20日 江副浩正、取調べ開始

    ★逮捕後の取調べは拷問とも呼ぶべき惨状が広がり、江副氏は「人権侵害である」と『リクルート事件 江副浩正の真実』で述べているほど凄まじいものであった
    取調べの様子はこちらから

  13. 1989年2月13日 江副浩正を逮捕【長谷川寿彦、式場英への贈賄(NTT法違反)】

    ★翌14日、朝日新聞はこの報道で多くの紙面を割いている。一面には『リクルート事件 江副浩正の真実』の表紙写真もうかがうことができる。多くの人に衝撃を与えた。しかし当の江副氏はこうしたメディアスクラムをどのように受け止めていたのか?
    メディア報道と江副氏の戦いはこちらから
    またこの紙面より朝日紙面上で「追跡リクルート事件」というコラム連載が始まっている。

  14. 1989年3月31日 竹下登首相激励のパーティー券をリクルート社が2000万円分購入したことが報道された

    ★朝日新聞は実質的な政治献金であると見出しで強く主張。

  15. 1989年4月25日 竹下登首相退陣表明
  16. 1989年4月26日 青木伊平・竹下登元秘書、自殺

    ★青木は「竹下の金庫番」と呼ばれた男で、絶対な信頼をおいていた。

  17. 1989年5月29日 安倍晋太郎自民党幹事長、宮沢喜一元蔵相、加藤六月元農水相の秘書や会計担当者4人を略式起訴(政治資金規正法違反で)
  18. 1989年6月2日 竹下内閣総辞職
  19. 1989年6月3日 宇野宗佑新内閣が発足
  20. 1989年6月6日 江副浩正、113日の拘留を経て保釈される(保釈金2億円)
リクルート事件 江副浩正の真実