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新刊JPトップ > 特集 > 「リクルート事件の真実 ― 葬り去られた稀代の経営者・江副浩正 ―」

メディア報道が映し出した「虚像」

江副浩正 朝日新聞

「助役が関連株取得 「リクルート」川崎市誘致時」との朝日新聞の報道は「寝耳に水の報道だった」といい、「問題とされたビルは、川崎駅西口の再開発のため小松助役から熱心に誘致されて建てたもので、リクルート側から何かを依頼したという事実はない」(『リクルート事件・江副浩正の真実』p14)と指摘。

■助役が関連株取得 「リクルート」川崎市誘致時
公開で売却益1億円 資金も子会社の融資

スクープ報道として掲載。「株購入資金も、リクルートの子会社から融資を受けていた模様だ。株に絡んだ政治家の資金づくりが問題になっているが、今回、革新自治体の最高幹部が手を染めていることが明るみに出たことで、波紋を広げそうだ」

江副氏の辞任を、朝日新聞を含めた5大新聞全てが一面トップで報道。江副氏は本書内でこのように語る。
「私の会長辞任の記事が五大紙すべての一面トップで大きく扱われているではないか。
・・・なぜこのように大きな報道になるのか。私の緊張感は急速に高まった。」(p22)
メディアが大きく報道すれば報道するほど、世間の熱も高まっていく。江副氏の会長辞任が当時、ここまで世間から注目されていたどうかは定かではないが、江副氏の反応を見てもこの事件そのものの影響力がメディアによって高まっていく姿がうかがえる。

■江副リクルート会長辞任
関連株譲渡で引責 政界などに波及し決断

1面をはじめ、2、8、社会面で取り上げ、経済面(8面)には江副流経営を分析した記事を掲載。「個人的には社交ダンスの名手として知られ、リクルートの「顔」として、江副氏だけが目立った。その個人経営体質が、今回の事件の背景にあったともいえる」という文章で記事を締めくくる。

『AERA』と朝日新聞社の共同インタビューの裏側の真相を江副氏は克明につづっている。

『AERA』編集長の富岡隆夫氏から「単独インタビューに応じてくれたら、『“打ち方やめ”にする』という」申し入れがあった。江副氏は「受けるか否か迷ったが、「これで“打ち方やめ”にする」という言葉に惹かれ、あくまで『AERA』限りなら受けてもいい」(p25)という想いからインタビューを受けた。
しかし、インタビューの場に来たのはAERAの人間だけではなかった。そこには、朝日新聞社の遊軍記者などもいた。

「・・・『AERA』限りということだったのに話が違うと、生嶋(元産経記者)が粘り強く交渉したが、先方は一歩も引かない。多勢に無勢で、やむなく三〇分だけと条件を決め、インタビューを受けた。」(p26)

またインタビューは30分を過ぎても終わらず、2時間ほどインタビューを行い、フラッシュを浴び続けたという。江副氏はこの後、体調不良(情緒不安定)で入院することになる。

■「政治家へ譲渡」の認識否定せず リクルート関連株で江副氏
江副浩正氏の単独インタビューの様子が朝日新聞に掲載。秘書との交際やコスモス株譲渡の動機について語られている。そして「涙声。『心の傷は死ぬ瞬間まで残る。死んでも残るかも知れない。私はもう社会復帰してはいけないと思っております』」という江副氏の言葉で締めくくられている。

国会証人喚問の新聞報道を見て、また江副氏は驚くことになる。
朝日新聞の「緊迫、どよめく委員会」という見出しに対しては、江副氏は「委員会は静かで、どよめきなどはなかった。なぜ、こんな見出しになるのだろうか」(p53)と疑問視する。
新聞各紙は、「疑惑が深まる」という論調で見出し・記事を構成。しかし、江副氏は「本分を読むと何の疑惑が深まったのか」(p54)と疑問に思い、報道に恐怖感を覚える。
果たして新聞の「煽る」見出しが、事実を表しているのか。我々も疑問を感じざるを得なくなるシーンだ。

■警察関係者にも株譲渡
江副氏、リクルート特別委で証言 民間人公表は拒む リストの不備で陳謝

江副氏の国会証人喚問を大きく報道。特にクローズアップしているのが警察関係者への株譲渡。14面には「追及され「警察関係に」 緊迫、どよめく委員会」という見出しとともに江副氏が一礼する姿を掲載している。
街の声からは「本当のことをしゃべったらとんでもないことになるんでしょうね。それだけの質問をできる議員さんがいるのかどうか。川崎進出だって江副さんの戦略のほんの一部だと思う」など、江副氏が「本当のこと」を持っているなどの邪推が行われ、さらには国会への不信の声を聞くことができた。

江副氏は2月13日に逮捕。そして拘置所に移送されるわけだが、そこで待ち構えていたのは大量のフラッシュであった。そこで江副氏は「これは“見せしめ”だ。私は被疑者に過ぎない」(p106)と憤る。
拘置所に入る時間と拘置所への入り方をあらかじめメディアに伝え、まさに見せしめのような形でフラッシュをたかせる。まだ容疑者であるにも関わらず、そこには人権というものが見えてこない。これも一つの拷問ではないだろうか。

■リ社前会長・江副を逮捕 東京地検 NTTルートまず着手
株譲渡、贈賄と断定 式場・長谷川は収賄 贈賄で小林も

リクルート事件が朝日新聞を占拠したかと言わんばかりの大きな報道がなされており、社会面(30面)では「『軽薄短小』に“乗る”」という見出しとともに、江副氏がひたすら政界とパイプ作りに励む姿が、江副氏の落日を表現するかのように描かれている。

リクルート事件 江副浩正の真実