だれかに話したくなる本の話

ストレスへの対処にも効果的?作家・五木寛之がすすめる「回想」の力

『回想のすすめ - 豊潤な記憶の海へ』(中央公論新社刊)

新型コロナウイルスの流行によって、外出の機会も減り、自宅にいる時間が以前より長くなった今だからこそ「回想」を、と語るのは、作家の五木寛之氏だ。

回想というのは「昔は良かった」など、過去を思い返すこと。「感傷にふける」という意味で、後ろ向きな行動だと考えられることが多いが、五木氏はむしろ積極的な行為と考えている。古い記憶の海に浸るだけではなく、何かをそこに発見しようとする行為だからだ。広く、深い記憶の集積から、いま現在とつながる回路を手探りする「記憶の旅」が回想の本質、と五木氏は述べる。

回想のすすめ - 豊潤な記憶の海へ

回想のすすめ - 豊潤な記憶の海へ

不安な時代にあっても変らない資産がある。それは人間の記憶、一人ひとりの頭の中にある無尽蔵の思い出だ。年齢を重ねれば重ねるほど、思い出が増えていく。記憶という資産は減ることはない。齢を重ねた人ほど自分の頭の中に無尽蔵の資産があり、その資産をもとに無限の空想、回想の荒野のなかに身を浸すことができる。これは人生においてとても豊かな時間なのではないだろうか。最近しきりに思うのだ。回想ほど贅沢なものはない。