だれかに話したくなる本の話

TIMゴルゴ松本が少年院で講演を続ける理由

「命」「炎」などの漢字ギャグで人気を博すお笑いコンビTIMのゴルゴ松本氏。バラエティ番組や子ども番組で活躍する一方で、別の活動を行っている。

それは、2011年から10年間続けている少年院の子どもたちに向けて『「命」の授業』という講演を行うボランティア活動だ。

■ゴルゴ松本が少年院で講演を続ける理由

『「命」の相談室-僕が10年間少年院に通って考えたこと』(ゴルゴ松本著、中央公論新社刊)では、ゴルゴ松本氏がなぜ少年院でボランティア講演をするようになったのか、そしてSNSで募集した今の時代の生き方に苦しむ個人のお悩みに、漢字や日本語の解釈を通したゴルゴ松本氏なりのやり方で答えていく。巻末には、「金八先生」として長い間悩める少年少女の心に向き合ってきた武田鉄矢氏との対談も収録している。

ゴルゴ松本氏はどんな講演を行っているのか。少年院や刑務所の慰問というと、歌手なら歌で、お笑い芸人ならコントや漫才で入所者に楽しい時間を過ごしてもらうのが定番。しかし、ゴルゴ松本氏は、コントや漫才ではなく、少年たちが社会に出た時のための講義をしている。それが『「命」の授業』だ。

ずっと勉強を続けてきた漢字や歴史に、そこから知る先人たちの叡智、日本語の奥深さを踏まえ、人生を前向きに生きる自分なりの考えを、漢字の意味とともに話すのがゴルゴ松本氏の講義だ。わかりやすく説明するためにホワイトボードも活用し、熱く語りながらも、ギャグあり、お笑いありの講義をしているという。

この講義で話す内容の原型になったものは、2000年代後半から定期的に後輩芸人たちを集めて開いていた「ゴルゴ塾」だという。ブレイクしていく後輩芸人に追い抜かれ、夢や目標を見失ってしまった芸人たちのために、ゴルゴ松本氏は自分の学んだ漢字や歴史の知識、読んだ本の話をして、元気を取り戻すきっかけにならないか、と試行錯誤で「ゴルゴ塾」の集まりを定期的に開いていたという。

夢を見失い腐ってしまった若手芸人たちの境遇と少年院に入ることになってしまった少年たちの境遇は、実は近いんじゃないか、と思ったゴルゴ松本氏は、初めて慰問講演会の依頼が来たときに「ゴルゴ塾」で話した内容を少年たちにわかりやすいようにアレンジして話すことに決めたという。

『「命」の授業』というネーミングは、ゴルゴ松本氏の漢字ギャグ「あっ、命!」に由来するが、それに加え、「命」=生きること、かけがえのないものであることの意味や大切さについて考えてほしい、という願いが込められている。

本書2章の「命」の相談室では、個人のお悩みにゴルゴ松本氏が熱く答えている。バラエティ番組で見ていたゴルゴ松本氏とは、また違う一面を本書から知ることができる。命の大切さや生きることは楽しいことであることをゴルゴ松本氏から学べるはずだ。

(T・N/新刊JP編集部)

「命」の相談室-僕が10年間少年院に通って考えたこと

「命」の相談室-僕が10年間少年院に通って考えたこと

今が辛い人、死にたい人。「命」を守るためなら全力で逃げろ。
知ってるはずでしょ。生きる事って楽しいんだよ!
「命」などの漢字ギャグでお茶の間の人気者となったお笑いコンビ・TIMのゴルゴ松本。彼は二〇一一年から現在に至るまでの十年間、全国各地の少年院を中心に漢字の知識を通して人生について語るボランティア活動「命の授業」を行ってきた。好評を博したこれらの講演内容をまとめた著書は、二〇万部のベストセラーに。長きにわたり若者の人生に寄り添い続けてきた著者が、生き方に惑う人たちの悩みに答え、生きづらい今の時代を楽しく生きるヒントを与える、令和版「命の授業」。巻末に俳優・武田鉄矢氏との特別対談を収録。

この記事のライター

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T・N

ライター。寡黙だが味わい深い文章を書く。SNSはやっていない。

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