だれかに話したくなる本の話

【「本が好き!」レビュー】『ルビーが詰まった脚』キャサリン・R・ハワード著

提供: 本が好き!

著者の作品を読むのは初めてでした。短編集なのですが、どの作品も概ね童話っぽいのですよ。でも読んで行くと……怖い!
え゛~! これって何歳位を対象年齢に想定しているのでしょうか?
まあね……子供って案外残酷だったり怖い話を好んだり耐性があったりしますからねぇ(水増し脚色されていないグリムなんてかなり怖かったりしますよね)。
どんなお話か少しご紹介しましょう。

〇 葉っぱでいっぱいの部屋
広大なお屋敷にウィルフレッドという男の子が住んでいました。彼はこのお屋敷の跡取り息子なのです。ですが、みんなからちやほやされるなんていうことは全くなく、厳しいアガサ伯母に一族を継ぐための教育と称してがっちり管理されているのです(ウィルフレッドの両親は既に亡くなっており、伯父夫婦が後見人になってるのね)。
ある時、ウィルフレッドはいくつあるか分からない部屋のドアの一つを開けてみたところ……部屋の中には葉っぱがぎっしり詰まっていました。
何なんだ、これは?!
その時、部屋の中から声がしました。「それで、入るの? 入らないの?」
葉っぱをかきわけて、潜り込んで部屋の奥に入っていくと、空間が開け、そこには大きな木があるではないですか!
そしてそこにはエムという子がいたのです(その他にも人がいました)。
近所の子供たちとも遊ばせてもらえないウィルフレッドはたちまちエムと友だちになり、その後、伯母の目をかすめては部屋に通うようになったのです。

その後、屋敷が映画撮影の舞台に使われることになったのですが、屋敷をすっかり気に入った監督は、屋敷を解体してハリウッドに持って行く、一族も屋敷と共に引っ越すという提案をしてきて、伯父夫婦も莫大なお金と引き換えにこの提案を飲んだのです。
大変だ! 屋敷が取り壊されちゃう!
びっくりしたウィルフレッドはエムに相談を持ち掛けたところ……。
うへ~……。

〇 ルビーが詰まった脚
ひょんなことから町の獣医の跡を継ぐことになったテーセウス。その病院にはありとあらゆる鳥が飼われており、中でも不死鳥だけは絶対に籠から出してはいけないと言い残されます。また、医師はルビーが詰まった義足をつけていたのですが、これも引き継ぐことになりました(と、言ってもテーセウスは脚は悪くないので義足をつける必要はないんですけどね)。

病院は医師の娘のマギーが手伝っていたのですが、マギーは独身のテーセウスの手伝いをすることになるのは世間体が悪いし、第一籠に閉じ込められている可哀そうな鳥たちとこれ以上暮らしたくないと言うのです。
テーセウスも鳥を籠に閉じ込めておくのは良くないと思っていたのでマギーにいてもらえるならという気持ちで不死鳥以外は全部逃がしてしまうのです。
でも、不死鳥だけは約束したから……。
ところがこの不死鳥、狂暴なのですよ。怖い目でじっと睨んでくるんです。そして……その後、テーセウスは何度も事故に遭いそうになります。

どうやら不死鳥はテーセウスの脚をダメにしてルビーが詰まった脚をつけさせたいらしい。なんてことだ!
テーセウスはルビーが詰まった脚などつけたくないのです。この上は……遂にテーセウスは不死鳥を籠から出したところ……。
うわっ、このオチもこれで良いの?

ネタバレ回避のためにオチは書けないんですが、このオチが怖いのよ~。
ファンタジー作品として読んでも良いのでしょうけれど、ちょっと毒があるぞ~。

(レビュー:ef

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ルビーが詰まった脚

ルビーが詰まった脚

中には見たこともないような鳥がいた。
羽根はすべて純金で、目はろうそくの炎のようだ。
「わが不死鳥だ、あまり近づかないようにな。凶暴なのだ」
不死鳥とルビーが詰まった義足を押しつけられた青年が見いだした解決策とは?

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