だれかに話したくなる本の話

【「本が好き!」レビュー】『性食考』 赤坂 憲雄著

提供: 本が好き!

思えば、この本のはじまりは東日本大震災の以前に属している。カニバリズムに関心があった。

恒例の本はお尻から。まずはあとがきを読みました。東日本大震災とカニバリズム。決して結び付けている文脈ではないものの、この二つの言葉が並べられているのを見ると少しドキッとします。

表紙折り返しを見て、食べる、交わる、殺すことの繋がりを考察したものであることはわかっていたので、東日本大震災とカニバリズムがほぼ並列されているのを見て、ギョッとさせられました。

たまに見られる現象ですが、読みたい!と思わせる参考文献を数多く拾わされる読書になりました。参考文献は巻末にありますが、全ては読めないので、以下は読んでおこうかなと思っています。

『子どもの本と〈食〉 物語の新しい食べ方』川端有子、西村醇子編
『食の精神病理』大平健著
『タブーの謎を解く』山内昶著
『ヒトはなぜペットを食べないか』山内昶著
『マンウォッチング』デズモンド・モリス著
『ウーマンウォッチング』デズモンド・モリス著
『九相図をよむ 朽ちてゆく死体の美術史』山本聡美著
『エロティシズム』ジョルジュ・バタイユ著
『語りの廻廊 「聴き耳」の五十年』野村敬子著

どれも著者がここで論考している、食べる、交わる、殺すに関わるものですが、特に食べると交わるに関する考察に関わっている書籍をリストアップしました。読んでみたいと思わせるんですよ。

特に第三章「食と性と暴力と」と第四章「動物をめぐる問題系」に引き込まれました。以下はその多くが参考文献からの引用になりますが、この場で論考されることが気になって仕方ありません。

子どもの本における〈食〉は、おとなの文学における〈性〉の代替であるといわれることが多い。

構造がよく似ているから「食」は「性」の比喩になりえたのでしょう。

人類が肉にたいする特別な嗜好を示し、肉こそを「真の食物」と見なす傾向があり、それゆえに「タブーが集中的に肉に付着している」

本書は数多くの参考文献からの引用が多用されていますが、それはこれまでも先人たちがこの食べる、交わる、殺す、これらの不可思議な繋がりについて論考を重ねてきたことの証でもあります。

先人たちが重ねてきた、特に食べることと交わることの関わり合いを「性食考」という一言でよくぞ纏めたものだと感心します。ここで展開される論考とがっぷり四つに組むと頭が変になりそう。

ただし、気になるのもまた事実。これは手元に置いておき、いずれゆっくり熟読したい一冊でした。こうなると著者である赤坂憲雄の別の著作も気になります。今週は週末に当たりを引きました。

(レビュー:allblue300

・書評提供:書評でつながる読書コミュニティ「本が好き!」

本が好き!
『性食考』

性食考

「食べちゃいたいほど、可愛い。」このあられもない愛の言葉は、“内なる野生”の呼び声なのか。食べる/交わる/殺すことに埋もれた不可思議な繋がりとは何なのか。近代を超え、人間の深淵に向かい、いのちの根源との遭遇をめざす、しなやかにして大胆な知の試み。

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