だれかに話したくなる本の話

働き方が変わる時代の中で、上に行くビジネスパーソン考えていることとは

入社5年目にもなれば、仕事にもすっかり慣れ、後輩もできてくる頃だろう。言われたことをやるだけではなく、業務の幅も広がり、責任もついてくる。ただ、このままこの感じでずっと働くのかなと、将来に不安を感じる時期でもあるはずだ。

5年目という難しい時期。どうモチベーションを保ち、働いていけばいいのだろうか。

『起業家のように企業で働く』(小杉俊哉著、クロスメディア・パブリッシング刊)では、20代後半~30代前半の若いビジネスパーソンに向けて、著者の小杉氏が組織人事コンサルタントや大学教員としての経験の中で出会ってきた「起業家」マインドを紹介する一冊である。

企業で働くビジネスマンも、自ら仕事を作り出し、自らの責任において行う働き方――いわゆる「自律」が必要だ。
入社3年目くらいは、仕事を覚えて、言われたことを一人前にできていることを目指していたはず。しかし、言われたことしかできない人間は、環境が変化すると生き残れない。

近年、新入社員の「反出世思考」が指摘されている。ワーク・ライフ・バランスという概念が浸透し、仕事だけでなく、プライベートも大事にしたいと考える人が増えている影響もあるのだろう。また、転職志向が減り、会社で働きたいと考えている一方で、企業側の考えが変わってきていると著者は指摘する。
以前は、定年まで働くことを前提とした人材マネジメントが当たり前だった。しかし、現在は定年まで面倒を見ることを前提にはしていない。企業経営に貢献できていない人を長期的に雇い続けられるほどの余裕が企業にはなくなっているのだ。

そんな中で、人材は、組織のニーズに見合った能力を高める自己投資をし続けることが大事だ。そこで、中長期の自分がこうなりたいという目標である「キャリア・ビジョン」が重要となる。
目の前の仕事を終わらすことだけを考えていると、いずれ頭打ちになるだろう。しかし、ビジョンを持つことで、自分のすべきことがクリアになるので、日々の仕事の意識や時間の使い方も変わってくる。
プライベートの使い方もそうだ。プライベートも仕事も同じ人間のやることであり、実際には、プライベートの活動やネットワークが仕事のヒントになったり、直接的に仕事に繋がることもある。なので、「ワーク」と「ライフ」を分離してしまうのではなく、その接点をもち両方を有意的に結びつけて、人生を有意義にしようとする姿勢も大切だ。

もう一つ紹介したいのは、企業内で勝ち上がってために必要なスキルである。このスキルは競争社会を生き抜くために重要なものだ。

仕事は「完成度」を問われる。一方、その完成度とともにもう一つ重要な軸が「時間」だ。仕事は「完成度」と「時間」のかけ算だからである。
仕事は最高のアウトプットであるに越したことはない。しかし、タイミングを失っていたら何の役にも立たない。だから、「素早くて雑」でいいのだ。

たとえば、3日で仕上げて欲しいと言われた仕事を1日でなんとか仕上げた。ただし、完璧ではなく、6~7割のもの。一般的に上司は、判断するための情報が欲しいので、必ずしも完璧なものを求めているのではなく、要点や傾向が分かればいい。早いということは何よりも価値があるのだ。逆に時間をかけるのであれば、最高のアウトプットが求められるということだ。

これは、お礼状やお礼メールなどでも同じことがいえる。人にお世話になったり、ご馳走してもらった場合は、できれば当日中か翌日にはお礼状かお礼のメールを出す。できる人に共通した行動だ。

5年後、自分はどうなっているのだろう、と自分自身の将来を描けなくなったとき、本書を手にとってみてはどうだろう。きっと働き方のヒントとなるはずだ。

(新刊JP編集部)

起業家のように企業で働く

起業家のように企業で働く

これぞ入社5年目の教科書。

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