だれかに話したくなる本の話

まるで「子ども」のよう… こんなリーダー・上司がいる会社はダメになる!?

働きづらい会社には、必ずそうなる原因があるものだ。
明らかに合理的ではない慣習やマニュアル、新しいアイデアが受け入れられない空気、保身ばかりを考える上司など、数え上げればキリがない。

働きづらい会社は、高度経済成長期のワークスタイルがそのまま引き継がれていることが多いようだ。そんな働きにくい会社の特徴と変革のヒントを与えてくれる一冊が『「一体感」が会社を潰す 異質と一流を排除する<子ども病>の正体』(秋山進著、PHP研究所刊)だ。

本書は日本企業の構造的な問題や成熟度の低さを指摘され、会社を変革するための提言と、働きにくい会社でも上手に折り合いをつけながらも成果を出していくための考え方が示されている。
2014年に出版されているが、働き方改革を考える上でも読みなおしたい一冊だったのでご紹介したい。

■働きにくい会社は驚くほど「子どもっぽい」

著者は、従来の成功モデルにしがみつき、かつて合理的であったやり方をいまだに続けようとする組織全体の思考や行動を「子ども病」と呼んでいる。

「子ども病」は、大きく分けて「個人」「組織文化」「マネジメント」の三つの分野で見られるという。

たとえば、仲間意識を大事にしすぎる個人が多い会社は、いかにも子どもっぽい側面がある。いつもの仲間と自分たちのやり方や考え方に固執するあまり排他的になるのだ。
それは子どもが仲良しグループをつくり、仲間うちのルールを理解しない子どもを村八分にするのと同じだ。

また、忠誠心の表明を要求する上司やリーダーがいる会社もある。
深夜にふらっとオフィスに顔を出して食事に誘い、断ると相手を冷遇するという、困った「子ども上司」は実際にいるようだ。これはまさにガキ大将の発想そのままだろう。

本書ではこのような「子ども病」の15のパターンが紹介されている。

■前時代的なマネジャーは「ダメ上司」に成り下がる

働きにくさを助長する「子ども病」を抱える会社があるのは、以前はそういう組織のほうが経営者にとって運営しやすく、競争において合理的だったからだ。

生産規模と効率が大事だった高度経済成長の時代は、みんなが同じ方向を向いて、同じときに、同じやり方で、同じことをするほうが効率的で大きな成果につながった。昨今では、「多様性」が競争力の源泉だと言われているが、ひと昔前までは、むしろ「同質性」こそが競争力の源泉だったわけだ。

しかし、日本の市場は成熟して成長はゆるやかになり、グローバル化の波もやってきた。そこで求められるのは、「子ども組織」から脱却だ。それは競争力の源泉が変わったように、様々な面での変革が必要になるということだ。

たとえば、子ども組織のマネジャーは「自社のやり方」に基づく調整や根回しが主な仕事だった。
十数年も同じ組織に所属していれば、誰でもその組織の文化メカニズムを把握できる。そこで、「誰に話を通しておくと物事が進めやすいか」「決定者がいつも大事にする判断基準は何か」などを知っているだけでマネジャーは務まった。

ところが、今の時代はそうはいかない。多様性を束ねて、機能的に統合し、共通の目標を実現させることが、求められているマネジャー像だ。そのためには、環境、リソースを的確に把握し、長期・短期両方の目標を戦略的に考えなければいけない。
過去のマネジメントが同質化した人たちの士気を高め、目標達成までやり続けさせる仕事だったことに比べると、難易度はかなり上がっている。

今、マネジャーの位置にいる人は、前時代的なマネジメントを続けているといつかは手痛い目に合うことになるはずだ。退職まで逃げ切れると思わず考えを改めたほうがいいだろう。 また、子どもっぽい上司の下や会社で働いている若い世代は、こうした前時代的な価値観を踏まえておくと立ち回りや選択が上手くいくようになるだろう。

(ライター/大村佑介)

「一体感」が会社を潰す 異質と一流を排除する<子ども病>の正体

「一体感」が会社を潰す 異質と一流を排除する<子ども病>の正体

幼稚な組織と心中しないために読むべき本。

この記事のライター

大村佑介

大村佑介

1979年生まれ。未年・牡羊座のライター。演劇脚本、映像シナリオを学んだ後、ビジネス書籍のライターとして活動。好きなジャンルは行動経済学、心理学、雑学。無類の猫好きだが、犬によく懐かれる。

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