だれかに話したくなる本の話

新任マネージャーは「扱いの難しいクセモノ部下」とどう接するのが正解?

マネージャー次第でチームや部署の生産性や仕事の成果には差が出る。この春からマネージャーになった人たちの明暗が分かれ始めるのは、春から数カ月が過ぎようとしている今くらいの時期だろう。
まだチームが上手く回せていない新任マネージャーやリーダーはここが踏ん張りどころだ。

とは言え、マネージャーやリーダーとして何が足りないのかを知っておかなければ踏ん張ることもできない。
そこで役に立つ一冊が 『リーダーシップのなかった僕がチームで結果を出すためにした44のこと』(佐藤達郎著、加納徳博イラスト、実務教育出版刊)だ。

広告代理店の「コピーライターからクリエイティブ・ディレクター」になった著者の立場は、多くの「一社員からマネージャー」になった人たちと同じはずだ。著者がその経験から得たリーダーとしての心得を本書からいくつか紹介しよう。

■自分の意識を「プレーヤー」から「リーダー」に変える方法

著者は「リーダーシップは天性の才能ではなく、“考え方”や“スキル”」だと述べている。

それによって、チームのメンバーが能力を発揮できるような環境を整えること、その能力をひとつの方向にまとめあげること、チームとしての成果を挙げることがリーダーシップの在り方なのだという。

そこで第一に心得るべきことは、「自分はプレーヤーではなくリーダーである」ということだ。
当たり前のようだが、リーダーになったばかりの時期はプレーヤー感覚がなかなか抜けない。その感覚があると「自分でやったほうが早い」と自ら手を動かしてしまったりして、結果的にチームが成長しないという悪循環を生み出す。

リーダーであることを自分に意識させていくには、普段から**「うちのチーム」を主語にして話すよう心がける**といい。このクセをつけると自然とチーム主体の考え方に変わる。 また、同時に部下から「この人はチームのことを考えて動いている」と感じてもらえるので一石二鳥の方法だ。

■扱いが難しい「曲者部下」は味方につける

新任リーダーにとって厄介なのが曲者部下の存在だ。
スキルやモチベーションがないわけではなく、力はあるが扱いが難しい部下には二つのパターンがあるという。

・年齢が近い等の理由で、リーダーを認めておらず、反抗的で指示に従わない。
・異なる専門性を持っていて、その部分でリーダーを出し抜こうとしたり、試そうとしたりする

そんな曲者部下に有効なアプローチは、力を認めた上で、上下関係をハッキリさせることだ。
曲者部下の力を認め、本人にも周囲にも表明する。その上で、「決めるのは自分だ」と怯むことなく行動でハッキリ示す。この二つは、セットで行うことが大事なのだ。

時には曲者部下と戦わないといけない場面も出てくるだろうが、そこは戦ってでも戦力と活用するほうが得策だ。扱いが難しいからと曲者部下を野放しにしておくと、チームはまとまらないことを肝に銘じておこう。

■トラブル対応では「指示の数」を減らす

リーダーになると責任が増えるのでトラブルが起こると冷静さが保てないこともあるかもしれない。 しかし、そんなときこそリーダーの真価が問われ、部下との信頼を築けるかどうかの分かれ目になる。

トラブル対応におけるリーダーの振る舞いの鉄則は次の3つだ。

・「グチ禁止」「怒鳴り禁止」
・「解決」だけに集中する
・「指示の数」を減らす

まず「グチ」と「怒鳴り」は絶対に厳禁。グチっても問題は解決しないし、怒鳴れば部下は萎縮して動きが止まるからだ。その上で、部下への叱責や反省の促しなどは後回しにして「解決」に集中する。

意外に見落としがちなのが三つ目の「指示の数」を減らすことだ。 切羽詰まった状況で大量の支持を出すと、ミスが誘発されるので、問題解決に最も必要な1つか2つに指示を絞ることが大切だという。

本書では、他にも様々なリーダーの心得が学べる。少しでも自分のリーダーとしてのスキルに不安があるのであれば読んでおいて損はないだろう。

(ライター/大村佑介)

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この記事のライター

大村佑介

大村佑介

1979年生まれ。未年・牡羊座のライター。演劇脚本、映像シナリオを学んだ後、ビジネス書籍のライターとして活動。好きなジャンルは行動経済学、心理学、雑学。無類の猫好きだが、犬によく懐かれる。

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