だれかに話したくなる本の話

売上の1割以上をスポーツイベントにつぎ込むレッドブルのマーケティング戦略

2018年6月14日より、サッカーW杯ロシア大会がスタートする。

オリンピックと並ぶ世界最大のスポーツイベントとあって注目は高まるだろうが、企業からすれば全世界が視聴する大規模なスポーツイベントはPRの絶好の機会である。膨大なカネを払ってでもスポンサーになったり、広告を出したいと考えている企業は多いだろう。

世界的飲料ブランド・レッドブルも、スポーツを利用したマーケティングによってブランド力を構築してきた企業の一つだ。
レッドブルは1984年オーストリアで創業、いまや年間52億本を売り上げるブランドへと成長したが、スポーツイベントを利用したマーケティングがその成長の大きな原動力になっているようだ。

『レッドブルはなぜ世界で52億本も売れるのか』(ヴォルフガング・ヒュアヴェーガー著、楠木建、長谷川圭解説、日経BP社刊)は、レッドブルのスポーツ・マーケティング戦略について詳しく解説した一冊だが、それによると、レッドブルのスポーツ・マーケティングにはこんなキーワードがあるようだ。

■「エキサイティングな体験」こそがコンセプト

レッドブル創業者のディートリッヒ・マテシッツは「レッドブルは単なる飲料ではなくエキサイティングな体験であり、スリルや冒険である」と語る。
このコンセプトをもとに、レッドブルはさまざまなスポーツのスポンサーになったり、大会を主催したりしている。

レッドブルがマーケティングとして資金を出すスポーツは数多い。

・F1 ・サッカー
・アイスホッケー
・ビーチバレー
・BMX(自転車競技の一種)
・ダカール・ラリー(未整備道路を走破するモータースポーツ・ラリーレイドの一種)
・スキージャンプ
・競技ドリフト
・エアレース(飛行機を用いて飛行技術や機体性能を競いあうモータースポーツ)

「暴力」のイメージを持つ格闘技とのタイアップはブランドのコンセプトを誤解させる可能性として、距離をとっているが実に様々なスポーツに関わっているのである。

■売り上げの1割以上をスポーツイベントにつぎ込むマーケティング戦略

マーケティングのうちスポーツに比重を置くレッドブルだけに、かける費用も莫大だ。

マテシッツは、スポーツは「レッドブルの販売というメインビジネスを側面から支える対策」だと語る。
レッドブルは膨大な額をスポーツに費やしている。年間総売り上げの3分の1をマーケティングに、そのうちの3分の1をスポーツに充てている。実に売り上げの9分の1をスポーツ・マーケティングにつぎ込んでいるのである。この二重の「3分の1ルール」がレッドブルのスポーツ帝国の原動力となっている。

レッドブルはスポーツへ莫大な投資を続けることで、マイナーな「新しいスポーツ」を世に送り出し、育ててきた一面も注目に値するだろう。

レッドブルがブランド力を構築する上で、スポーツ・マーケティングは重要な役割を果たしてきた。
が、レッドブルのスポーツ・マーケティングは、レッドブル商品の強固なコンセプトがあってはじめて成り立つものであり、すぐ模倣できるようなものではないと言えそうだ。ただやみくもにスポーツに資金を投入すれば成功するという類のものではないのだ。

本書では、レッドブルのスポーツ・マーケティングの他にも、レッドブルの成長の軌跡や創業者のマテシッツについて詳しく述べている。

爆発的な成長を遂げたブランド・レッドブル。
その成長を支える経営戦略が知りたい人は大いに参考になるはずだ。

(新刊JP編集部)

レッドブルはなぜ世界で52億本も売れるのか

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