だれかに話したくなる本の話

【「本が好き!」レビュー】『汝、星のごとく』凪良ゆう著

提供: 本が好き!

「月に一度、私の夫は恋人に会いにいく。」
そんな一文から始まって、「どういうこと?」って物語に引き込まれていく。

主人公は青埜櫂(あおのかい)と井上暁海(いにうえあいみ)の二人。出会った高校時代から現在までの出来事と心の葛藤を、二人がそれぞれに語っていきます。

それにしても、もどかしい。
いつも相手を想っているのにすれ違ってしまう。しがらみから素直に行動できない。

高校卒業の時、暁海は「一緒に東京へ行こう」と櫂に誘われますが、父が愛人のところへいってしまってひとり残された母をおいては行けないと断ってしまいます。一方の櫂はやさしく、男に依存しては捨てられてしまう母の面倒を幼い頃から見てきたのですが、愛情表現が上手くありません。

都会で成功していく男と田舎で待つ女という上手くいかない典型のような関係で、心の距離が広がっていきます。さらに暁海には母の借金、櫂は共同執筆者のスキャンダルという試練が襲うのです。
暁海の住む小さな島は家庭内のゴタゴタもすぐに島中に広まってしまう土地柄で、その息苦しさが暁海をさらに追い込んでいきます。

そんな暁海を救ったのは高校時代の化学の先生、北原先生でした。
「誰がなんと言おうと、ぼくたちは自らを生きる権利があるんです。」
先生の言葉が背中を押されて暁海は、初めて“自分の生きたいように生きる”と自分の殻を打ち破ることができたのです。

切なくてやりきれない気持ちで読んでいましたが、最後は落ち着いた静かな時間を共有することができました。
そして事情がわかってしまえば、夫が恋人に会いに行っても許せるという気持ちも理解できます。

(レビュー:独醒書屋

・書評提供:書評でつながる読書コミュニティ「本が好き!」

本が好き!
汝、星のごとく

汝、星のごとく

その愛は、あまりにも切ない。

正しさに縛られ、愛に呪われ、それでもわたしたちは生きていく。
本屋大賞受賞作『流浪の月』著者の、心の奥深くに響く最高傑作。

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