だれかに話したくなる本の話

「心理的安全性のある職場」と「ぬるま湯職場」の決定的な違いとは

ここ数年、継続して成果を出せるチームの条件として「心理的安全性」という言葉が注目されるようになった。「心理的安全性」とは「対人関係においてリスクのある行動をとっても『このチームなら馬鹿にされたり罰せられたりしない』と信じられる状態」を指す。

自分の職場や自分のチームを振り返ってみよう。みんなと意見が異なる人を排除しようとしたり、笑いものにしたり、あるいは強権的なリーダーが独善的なやり方でまとめているようなチームでは、メンバーは心理的安全性を感じることはできない。パワハラやセクハラが横行する職場も同様であることは言うまでもないだろう。

■「心理的安全性」が「ただのぬるま湯」に変わる時

心理的安全性がここまで注目されているのは、先述の通りこれが担保されているチームは仕事の成果が出やすいからである。だからこそ、心理的安全性が担保された状態とはどんな状態なのか、深く知っておくべきである。なぜなら、この言葉は誤解されやすいものだからだ。

『心理的安全性 最強の教科書』(ピョートル・フェリクス・グジバチ著、東洋経済新報社刊)では、「心理的安全性」という言葉が「誰も厳しいことを言わず、お互いにやさしい言葉をかけ合い、陽気で明るい職場」のことだと勘違いされる危険性を指摘している。心理的安全性が確保された職場とは「厳しさのない職場」ではない。

心理的安全性の本質は、表面的な笑顔ややさしさで、良好そうな人間関係を取り繕うことではありません。「自分らしく周りの人に接することができる」ことです。相手と意見が違ったなら、対立を恐れずに「自分はそうは思わない」とはっきりと自分の考えを伝えられること。(『心理的安全性 最強の教科書』より)

心理的安全性は「仲良しごっこ」をすることで手に入るわけではない。だから、メンバー同士の仲が良くても、その関係が損なわれるのを恐れるあまりに意見の対立を恐れる職場は心理的安全性があるとはいえない。また、心理的安全性は職場が目指すべき「ゴール」でもない。心理的安全性は、あくまで成果を出す「手段」である。

■心理的安全性の確保のためにリーダーがすべきこと

では、この心理的安全性を自分の職場やチームに確保するために、リーダーやマネジャーは何をすればいいのだろうか。

本書によると、不可欠なのは「構造」と「対話」の二つだという。
構造とは

・ビジョン、ミッション(事業の意味・意義)
・チームが目指す目標
・評価の基準
・仕事の役割分担、ゴール、職務で求められるプロセス

のこと。これらを明確にすることで、仕事というゲームのルールが決まることになる。ルールがわかれば、メンバーはその枠組みの中で思い切ってプレーすることができるわけだ。

また「対話」は「会話」とは似ているようで異なる。会話が単に話すことだとしたら、対話は互いの理解を深め合うための創造的な会話を指す。

相手と意見が違うことが怖かったり、意見が対立したことで関係が悪化するのは、その人のことをよく知らないからだ。相手と異なる意見を率直に言える関係を作るには、日ごろからの「会話」だけでなく、相手を深く知るための「対話」が欠かせないのである。

「心理的安全性」は、ともするとただの「ぬるま湯」にもなりかねない。それで結果が出るほどビジネスは甘くない。だとしたら、マネジャーやリーダーは、どうチームをまとめ、どこに厳しさを持つべきなのか。

本書では、心理的安全性の本質とその醸成の仕方について解説していく。いうまでもなくそこでのリーダー・マネジャーの役割は大きい。自分がどう振る舞い、何を発信すべきかわからない人は、本書からそのヒントを得ることができるはずだ。

(新刊JP編集部)

心理的安全性 最強の教科書

心理的安全性 最強の教科書

「心理的安全性=楽しくやさしい職場」ではない
近年、日本社会にも「心理的安全性」の重要性が浸透してきましたが、
その言葉の響きからただ優しいだけの組織と誤解されていることがあります。

本来の心理的安全性とは、
「対人関係においてリスクのある行動を取っても、『このチームなら馬鹿にされたり罰せられたりしない』と信じられる状態」
「メンバーがネガティブなプレッシャーを受けずに自分らしくいられる状態」
「お互いに高め合える関係を持って、建設的な意見の対立が奨励されること」です。

本書では、改めて、成果を生む強いチームの「心理的安全性」を定義し、
組織を理想状態にするためには何が必要なのか、
「理解編」「マインドセット編」「実践編」の3つのPARTで
分かりやすい事例と共に解説していきます。

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