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Bestseller's Interview 石田衣良

『ドラゴン・ティアーズ─龍涙』
著者:石田衣良
出版社:文藝春秋
定価(税込み):1600円
ISBN-10:4163283501
ISBN-13:978-4163283500

book summary

言わずと知れた『池袋ウエストゲートパーク』シリーズの第9弾。
茨城の工場から中国人研修生が失踪した。彼女が戻らなければともに働いていた仲間は強制送還されてしまう。ふとしたことから相談を受けたマコトは中国人組織「東龍」の根城に乗り込む。

☆プレゼントのお知らせ☆
今回登場していただいた石田衣良んのご厚意により、直筆サイン入りの『ドラゴン・ティアーズ―龍涙』を読者1名様にプレゼントします。応募先、方法、〆切はインタビューの最後に掲載しているので、最後までじっくりと読んでください。

author profile

■石田衣良さん
 成蹊大学卒業後、広告制作会社勤務を経て、フリーのコピーライターに。「池袋ウエストゲートパーク」で、第36回オール讀物推理小説新人賞を受賞しデビュー。「4TEENフォーティーン」で第129回直木賞受賞。2006年に「眠れぬ真珠」で島清恋愛文学賞受賞。

interview index

1、「タカシよりもマコトに僕の性格が出ていると思います」
2、女性の話をとにかく聞いてあげることが大事
3、「本というものは一度通過するだけでいいと思っています」
4、取材後記

タカシよりもマコトに僕の性格が出ていると思います

石田衣良写真

音楽や映画、本が好きな石田さんにとって「池袋は馴染みの街だった」という。

―本作で9作目となる『池袋ウエストゲートパーク』ですが、このシリーズで石田さんが池袋を舞台に選んだ理由がありましたら教えてください。

このシリーズが始まったのはもう10年以上前になりますが、当時はもう『新宿鮫』が始まっていて、渋谷はJ文学に“渋谷系”という括りがありました。新宿と渋谷がダメだからあとは六本木と池袋しか残ってないなあ、とか考えていて、六本木は何か違うからじゃあ池袋でいいや、というくらいの感じでしたね。

―かねてから池袋が好きだった、というわけではなかったんですか?

もちろん好きでしたよ。コピーライター時代の事務所が有楽町線の飯田橋近辺にあったんです。そこからだと新宿に出るよりも有楽町線に乗って池袋に行く方が便利だったんですよね。CDを買ったり本屋さんに行ったり映画を観たりよく池袋で遊んでいましたから馴染みのある街ではありました。

―池袋のどんなところが気に入ったのでしょうか。

様々な人が雑多に混じっているところです。いわゆる私立の名門校でお金持ちばかり集まっているところよりも、いい子も悪い子もいる学校の方が勉強になるじゃないですか。池袋もそうで、若い人もお年寄りもお金持ちも貧乏人もヤクザもいる。そういうところが好きですね。小説の舞台としてもすごく扱いやすかったです。六本木を夜中に子供が歩いているとか、おばあさんが歩いているような小説は書けないじゃないですか。

―本シリーズの登場人物の中で魅力的なのはやはりタカシとマコトですが、石田さんご自身の性格がこの二人に投影されていたりもするのでしょうか。

タカシは完全に作ったキャラクターですね。だからタカシよりもマコトの方に僕自身の性格が出ていると思います。物事を斜め下から見るところとか、投げやりなのに熱血だったりするところとか。

―過去に出版された著作のなかで、石田さんご自身の性格に一番近い登場人物は誰ですか?

どうでしょうね(笑)でもマコトが一番近いような気がしますね。

女性の話をとにかく聞いてあげることが大事

―石田さんは恋愛小説の名手としても知られていますが、今の時代の恋愛に必要な要素はどんなものだと思いますか?

鈍感でバカなことではないでしょうか。自分のお金や時間を交際相手や奥さんに使うことに鈍感な方が恋愛をしやすいと思います。若い時にいかに無駄をしたり損をしたりできるかということがその人の器を決めるような気もしますしね。

―知人の女性から「彼氏と一緒に温泉旅行に行き、二人で貸切の露天風呂にも入ったのに、同じ布団で寝ても何もなかった。夜を共に過ごすのは初めてだったのに、これはいったいどういうことなのか?」という相談を受けたのですが、こういう男性は最近増えているのでしょうか?

最近そういう相談をたくさん受けますね。基本的に男性側が恋愛をする前に考え過ぎてしまうことが問題なのではないでしょうか。
ここでセックスをしたら責任をとらないといけないとか、相手を引き受けないといけないとか。セックスをしたいんだけど手を出せない、あるいは女性の前でかっこいいところだけを見せようとする。動物的な部分を表現できなくなっているんだと思います。でもそれでは恋愛は続かないし、どこかで全てをさらけ出すということが必要なのではないかと思いますね 。

―草食系男子って本当に増えているんですね。

今すごく多いですよ。若い人ばかりではなく40代くらいまでそういう人がいるみたいですね。浴衣でハグしておしまい、みたいな。

―男性側から見て、女性の信頼・尊敬を勝ち取るためには何が必要でしょうか?

男性は『自分にこれだけの価値がある』と主張すれば女性に信頼してもらえると思いがちですよね。でもそれは勘違いで、女の子は男の自慢話をほとんど聞いていないし、信用することもない。だから『いままでにこんな成果を出した』『こんなことをやって頑張った』というのはダメ。
それと、夢を語って相手を落とすパターンも大体は空振りして終わります。一番いいのは相手に話させることでしょうね。相手の言うことをとにかく聞くことができれば、どんな男性でもモテます。
女性の話を、たとえ理不尽でも意味不明でもとにかく聞いてあげて、最後に一言『君は本当によくがんばっているね』というようなことがさらりといえる人は、たとえ体重100キロ、年齢60歳でもモテますよ。でもこれは本当に難しくて、ほとんどの男性はできないでしょうね。

―石田さんご自身はいかがですか?

僕はそういうことが若い時から自由自在にできたんですよ(笑)

「本というものは一度通過するだけでいいと思っています」

石田衣良写真

取材の場所は石田さん宅の書斎。多くの本やレコード、CDがズラリと並んでいた。

―石田さんと小説の出会いを教えてください。

記憶に残っているのは7歳の時に読んだ海外物のSFです。エドガー・ライス・バロウズっていうターザンものの作者なんですけど、『地底世界ペルシダー』が一番記憶に残っています。当時の図書館に置いていた児童向けの本はどれも面白かったですね、三銃士とか、ルパンとか。

―生まれて初めて小説を書いたのはいつですか?

36歳の時です。初めて書いた作品と、その次に書いたものが新人賞の最終選考まで残って、3作目が『池袋ウエストゲートパーク』でした。 子どもの頃から作家になりたいなとは思っていましたが、ものを書く仕事ってやっぱり壁が厚いし、大変だろうなと思って手を出せずにいたんですよね。大人になってしばらくしてから、“時間の余裕ができたし、仕事もうまくいっているから書いてみようかな”と思ったのがきっかけでしたね。

―学生時代は書いていらっしゃらなかったのですか?

書いていなかったです。当時は作家がみんな化け物に見えました。世界中の作家の本を読んでは『とてもこんなレベルでは書けないな』と思っていましたから。

―今までに夢中になって何度も読み返した、という本がありましたら教えてください。

何度も読み返した、というのはないですね。僕は、本というものは一度通過するだけでいいと思っているんです。それは古典と呼ばれている作品でも同じで、暇な時にもう一度読むくらいでいいのではないでしょうか。
何を何回読んだかということよりも、本を読み続ける習慣自体がその人を変えるんだと思います。だからまず本を読む習慣をつけて、10年くらい経ってから過去の自分と比べてみてほしいですね。

―では「好きな作家ベスト3」のようなものもないのでしょうか?

作家という職業に関して言うと、好きな作家を3人パッと言えてしまう人はプロにはならない人なんですよね。プロは誰のものでもないオリジナリティを持っていないといけないので、こういう生活をしていると好きな作家というものがだんだんといなくなってしまうものだと思います。

―(石田さんの書斎を見渡して)本もたくさんありますけど、CDやレコードの数もすごいですよね。どのような音楽がお好きなのでしょうか?

小説を書いている間って音楽くらいしか楽しみがないんですよ。映画を観たりお酒を飲みながら書くわけにもいかないですからね。ここに置いているものですと、クラシック6、ジャズ2、ロック2くらいですかね。

―集中して書かれる時はどれくらい机に向かうのでしょうか?

〆切に追われている時は一日14時間くらい書き続けることがあります。でもやっぱりしんどいですよ。クタクタになります。

―小説ばかりでなく音楽にもかなり造詣が深い方だという印象ですが、今気になっている音楽やバンドがありましたら教えてください。

アメリカっていう昔のデュオですね。懐かしい白人のフォークロックという感じです。今書いている新作のテーマ曲のようになっていますね。

―作品ごとに執筆する際のテーマ曲があるのでしょうか?

そうですね。結構作品ごとに決まってくることが多いです。音楽って意外と文章の中に映るので、書きたい文章に合わせて曲を選んでいます。

―最後にファンの方とこのインタビューの読者の方々にメッセージをお願いします。

皆それぞれ苦労していると思いますけど、自分にあまりにも高い目標を設定して押し潰されないようにしてほしいですね。日々の仕事をコツコツとやりながらも楽しむ方法や息抜きを見つけてのんびり生きていってほしいです。ただ、それをやりながらも10年後、20年後の世界がどうなるかということをいつも考えておくのは大事なこと。その二つのバランスをうまく取ることができたらいい生き方になるのではないでしょうか。

 ご自宅にて、くつろいだ様子で取材に応じてくれた石田さん。壁一面の本棚に並べられた本やCD、レコードに思わず見とれてしまった。最近デビューした若手作家の作品もチェックされているようで、感想も交えてそれらの作品についても語ってくれた。 通算9作目となった本書だが、笑いあり涙ありのこのおもしろさは1作目から全く変わっていない。一度手に取れば、収載された4つの物語を一気に読み終えてしまうに違いない。
(取材・記事/山田洋介)


■『ドラゴン・ティアーズ―龍涙』直筆サイン本プレゼント
 今回、新刊JPニュースに登場して下さった石田衣良氏の直筆サイン入り『ドラゴン・ティアーズ―龍涙』を抽選で1名の方にプレゼント致します。件名に「石田衣良さんのサイン本」、本文には名前とインタビューの感想を明記の上、ご応募ください。応募はこちらから。〆切は10月5日となっていますのでお早めにご応募下さい。返信をもって当選メールとさせて頂きます。

※預かった個人情報は本プレゼントに関わる連絡のみに使用します。 それ以外の目的では利用いたしません。また、本企画が済んだ以降は、個人情報は保持いたしません。


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