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Bestseller's Interview 川上徹也

『あの演説はなぜ人を動かしたのか』
著者:川上徹也
出版社:PHP研究所
定価(税込み):735円
ISBN-10:4569773753
ISBN-13:978-4569773759

book summary

長い人類の歴史のなかで、演説はしばしばその分岐点になってきた。古くはリンカーンの勝利宣言、最近ではオバマ米大統領が演説の名手として評価されている。
『あの演説はなぜ人を動かしたのか』は、名演説として語り継がれるスピーチに共通する要素を紹介している。人類共通の『ストーリーの黄金律』とは一体何なのか?

author profile

■川上徹也さん
コピーライター&クリエイティブディレクター。1985年大阪大学人間科学部(比較行動学専攻)卒業後、大手広告代理店勤務を経て独立。東京コピーライターズクラブ(TCC)新人賞、フジサンケイグループ広告大賞制作者賞、広告電通賞、ACC賞など受賞歴多数。また並行して舞台やドラマの脚本家としても活躍。2008年より、ストーリーという切り口で、人の心を動かすさまざまな現象を分析することを目的に、湘南ストーリーブランディング研究所を設立。“人生のすべてエンターテイメントに!”するのがライフワーク。
著書に『仕事はストーリーで動かそう』『価格、品質、広告で勝負していたら、お金がいくらあっても足りませんよ』(以上、クロスメディアパブリッシング)などがある。
ブログ:カワテツの「出版プロモーションの裏側、全部見せます」

interview index

1、「参議院は全部回れたけど、衆議院は大変でした」
2、人類共通の感動のツボ「ストーリーの黄金律」とは?
3、「今後はビジネス書以外の本も書いていきたい」
4、取材後記

「参議院は全部回れたけど、衆議院は大変でした」

川上徹也写真

川上徹也さんがプロモーション先として選んだのは「国会」。議員さんたちは気さくに対応してくれたという。

―本書、『あの演説はなぜ人を動かしたのか』を拝読させていただきましたが、演説というのは文字になるとこれほど面白いものだったのか、と驚きました。

ありがとうございます。政治家のオフィシャルな演説というのは著作権がないので、この本で取り上げさせていただきました。本当は村上春樹さんのエルサレム演説ですとか、スティーブ・ジョブズさんの演説も入れて分析したかったのですが、政治家以外ですと著作権の問題があるようなので。

―周囲の方々の反応など、出版後の感触はいかがですか?

まだ発売2週間ですが、反応は上々です。(演説に関する本ということで)議員会館を回ってプロモーションをしたりもしたので、そういうところからより話題になればいいなと思っています。

―議員会館をまわるというのは珍しいプロモーションだと思いますが、どのようなことをされたのでしょうか?

演説を取り上げた本ですし、鳩山首相とはいかないまでも議員の方々に読んでいただきたいと思っていたんです。それで、書評ブロガーの鹿田尚樹さんが元参議院議員秘書ということで、相談に乗っていただきました。
最初は政党の機関紙に広告を載せるなどということを考えていたのですが、やはり議員の方々の部屋をひと部屋ずつ回るのが効果的だろう、ということで行ってきたんですよ。最初に鹿田さんと、同じく書評ブロガーの女子勉さんと一緒に参議院の議員会館をまわったのですが、各部屋にお邪魔して秘書の方に『もう先生には必要ないかもしれませんけど…』などと言ってチラシを手渡したり(笑)
参議院議員会館は全室回れて、また別の日に衆議院会館に行ったのですが、衆議院は議員数が倍じゃないですか、だから大変でしたね。それと、国会議事堂の中にある『五車堂』という書店さんにも行ってきました。

―国会議事堂の中に書店があるというのは初耳です。

そうなんですよ。参議院、衆議院にそれぞれにあって、ビルの中にあるちょっとした書店という感じですね。品揃えもなかなかのものでした。ご主人も感じのいい方で、この本を平積みしてくれていました。

人類共通の感動のツボ「ストーリーの黄金律」とは?

―本書の中で先日の衆議院議員選挙について触れていらっしゃいましたが、当選した民主党議員の方の中で、「この人の演説はうまいな」という方はいらっしゃいましたか?

全部見ていたわけではないですが、本書で触れているストーリーの黄金律からいうと、福田衣里子さんは良かったのではないでしょうか。彼女自身もそうですけど、彼女を候補に入れた民主党の選挙戦略もストーリーの黄金律にかなっていましたね。
今回は自民党の大物議員が地元選挙区にへばりついたじゃないですか。だから余計に福田さんなど民主候補との対立が強調されてしまい、『困難な敵に立ち向かう主人公』ということで民主候補が有利になってしまった。自民党の大物議員がもっと他の選挙区に応援に行っていたら、ひょっとしたらあそこまでの大差にはならなかったのではないかと思います。

―演説に関して、ご自身のブログで鳩山首相の所信表明演説(2009年10月26日)について触れていらっしゃいましたが、それについて詳しくお聞きしてもよろしいでしょうか?

鳩山首相の演説は惜しい部分が多いんです。所信表明演説の前、国連での演説も見ましたが、目標を掲げるところまでは良かった。ただ、本書で書いている『欠落した主人公』という設定をもう少し演出して、『目標を達成するまでに立ちはだかる障害』についてもっと触れていたら、より感動的で素晴らしい演説になったと思います。
所信表明演説の方は長かったという印象ですが、冒頭と最後は良かったと思います。熟語や難しい言葉を使いすぎずに、柔らかい表現を使うようにするともっと良くなるのではないでしょうか。偉そうな言い方になってしまいますが。『こうしたらもっとよくなるのに』と思うところが多かったです。

―本書で触れている、人類共通の感動を刺激するツボである『ストーリーの黄金律』のひとつに「乗り越えなければならない数多くの葛藤・障害・敵対するもの」というものがありましたが、自分を不利にしないように葛藤・障害・敵対するものを設定するのは難しいのではないでしょうか。

必ずしも『敵』ではなく、『目標を達成する際の障害』と考えるといいのではないでしょうか。小泉元首相は郵政民営化の時にそれを上手にやりました。『障害』『敵対』というと自分の外部のものをイメージしてしまうかもしれませんが、たとえば『自分の弱さ』といったものも『目標を達成する際の障害』として使うことができると思います。

―川上さんご自身は人前でスピーチをすることはお得意ですか?

それがあまり得意じゃないんですよね(笑)こんな本を出しておいてなんですけど。取材を受けることなどは多少慣れてきましたけど、自分のことを話すのは相変わらず苦手です。

「今後はビジネス書以外の本も書いていきたい」

川上徹也写真

広告とは「人の心をいかに動かすか」だと言う川上さん。これからの活躍に注目だ。

―川上さんの本業はコピーライターということですが、広告の世界に入ろうと思ったきっかけは何だったのでしょうか?

学生の時は比較行動学、具体的にはニホンザルの社会構造の研究をしていたのですが、元々社会心理学ですとか、人の心がどう動くかということに興味があったんです。当時読んでいた本も『服従の心理』のスタンレー・ミルグラムとか、社会心理学に関わるものが多かったですし。
広告はいかに人の心を動かすか、ということなので、自分が興味を持っている分野に通じると思っていました。それと、当時スピリッツで連載していた『きまぐれコンセプト』の影響も大きかったですね。広告マンの日常を描いた漫画なのですが、「ひょっとしてこれなら自分にも勤まるかも…」という気持ちになりました(笑)

―川上さんの本は前々作の『仕事はストーリーで動かそう』のように、『ストーリー』の持つ力を扱ったものが多くありますが、このような本を出版されるようになったきっかけはどんなことだったのでしょうか。

学生時代から舞台の脚本を書いたりしていたので『ストーリー』にはずっと関わっていましたし、コピーライターの仕事にしてもストーリーを作ることは大事なことでした。数年前、『起業道』というビジネスゲームの企画とシナリオを手がけたときに、クライアントから『こういうことを頼める人はなかなかいない』と言われたことがきっかけかもしれませんね。シナリオを書いている人はビジネスに詳しくなかったり、ビジネス畑の人は書くことが苦手だったりするので、両方できる人は珍しいのかな、と思いました。

―過去に読んで面白かった本やおすすめの本がありましたら教えてください。

『あの演説はなぜ人を動かしたのか』とあわせて読んでいただきたい3冊ということで、デール・カーネギーの『劇画でわかる こうすれば人は動く』、最近では野地秩嘉さんと小塚かおるさんの『小沢選挙に学ぶ 人を動かす力』…あとは、11月13日に発売される鹿田尚樹さんの『大事なことはすべて記録しなさい』を読ませて頂いたのですが、これも良かったです。

前回インタビューさせていただいた時に、2年間で10冊本を出したいとおっしゃっていましたが、達成はできそうですか?

そうですね。来年の11月で2年なのですが、あと5冊ですし、来月にも新刊が出るのでなんとかなるかなと思っています。今後はビジネス書以外にも、ストーリーの大切さを寓話でわかってもらうものや、哲学エンターテイメントのようなストーリーものも書いていきたいです。

―最後になりますが、この本をどんな人に読んでほしいと思っていますか?読者へのメッセージと併せてお願いします。

スピーチをする機会がある人に読んでほしいというのはもちろんですが、どのようにして政治家などの力を持った人が人々の心を動かしているかということや、ストーリーの力で人間の心は簡単に心が動いてしまうということを、知識として多くの人に知ってほしいです。この本は新書なのですが、純粋に知識を得る喜びを味わえるというのが新書の魅力だと思うので。

 記事にも書いたことだが、演説というものが文字になるとこれほどまで感動的だとは思っていなかった。政策の善し悪しや、本人の主義主張とは別に、力のある政治家の演説は人を魅了せずにはおかない何かがある。
 12月にも新刊が出る予定だという川上さん。その内容を聞きそびれたのは残念だったが、ご自身が掲載された『夕刊フジ』(10月31日号)をくれたり、神奈川のビーチのオススメスポットを教えてくれたりと、楽しい取材だった。
(取材・記事/山田洋介)


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■インタビューアーカイブ■
第1回 池田千恵さん『「朝4時起き」で、すべてがうまく回りだす!』
第2回 石田衣良さん『ドラゴン・ティアーズ―龍涙―』

再生

劇画でわかる こうすれば人は動く
デール・カーネギー/著
田中孝顕/訳
きこ書房
定価:1365円
ISBN:4877712518
ISBN-13: 978-4877712518 amazonでチェックする

小沢選挙に学ぶ 人を動かす力
野地秩嘉、小塚かおる/著
かんき出版
定価:1470円
ISBN:4761266384
ISBN-13: 978-4761266387
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大事なことはすべて記録しなさい
鹿田尚樹/著
ダイヤモンド社
定価:1500円
ISBN:4478012105
ISBN-13: 978-4478012109 amazonでチェックする





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『「朝4時起き」で、すべてがうまく回りだす!』
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