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Bestseller's Interview 長谷川和廣

『2000社の赤字会社を黒字にした 社長のノート』
著者:長谷川和廣
出版社:かんき出版
定価(税込み):1365円
ISBN-10:4761266031
ISBN-13:978-4761266035

book summary

本をパラパラとめくると、ノートをそのまま本にしたデザインに数々の至言と、力強く、そして厳しいメッセージが添えられている。
2000社の赤字企業を再生してきた著者・長谷川和廣氏の力強い言葉が読者から支持を受け、異例のベストセラーとなった本書。その至言は日常のビジネスライフに根差したものであり、机の上に置いておけば必ずあなたの道標となる一冊だ。
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author profile

■長谷川和廣さん
1939年千葉県生まれ。中央大学経済学部を卒業後、マルチナショナル企業である十條キンバリー、ゼネラルフーズ、ジョンソン等で、マーケティング、プロダクトマネジメントを担当。その後、ケロッグジャパン、バイエルジャパン、バリラックスジャパンなどで代表取締役社長などの要職を歴任。
2000年、株式会社ニコンと仏エシロールの代表取締役。50億円もの赤字を抱えていた同社を1年目で黒字へ、2年目で無借金経営に変貌させた経営手段は高く評価されている。
(Amazonより引用)

interview index

1、ベストセラーとなった『社長のノート』の原点
2、人生は「ケ・セラ・セラ」だ
3、若いビジネスパーソンに必要な力とは?
4、取材後記

ベストセラーとなった『社長のノート』の原点

長谷川先生写真

デスクの脇において、困ったことがあったらすぐに手に取れるような本が作りたかったと長谷川先生

―この『社長のノート』は昨年ベストセラーとなり、現在でも多くの読者から支持を受けています。長谷川先生ご自身はなぜ本書が多くの人に受け入れられたとお考えですか?

まずは、手にとって読んでみたら、本当に『社長の秘密のノート』だったということがあると思います(笑)。
この本には日常的な原理や原則、つまり日常のビジネスシーンにおいて困ったり、どう考えればいいのかわからなかったりするときの指針となることを書いているのですが、普通だったらこういった内容は本にせずにしまったままにしておくと思うんですね。
つまり、学者さんたちが学校で教えたりするような原理・原則ではなく、実務における原理・原則が書いてあるんです。もちろん実務にも様々なケースがありますが、それがこの本が受け入れられている1つの要因ではないかと思います。
また、社会の環境が激変する中でいろんな悩みが生まれてきている。そのときに、何か解決策は、となると思いますが、やはりこういう状況になるとかなり厳しいアドバイスが必要になります。そうした厳しいアドバイスが散りばめられているのがこの本の特徴ですね。

―確かに本書からは実務、現場感覚というのがリアルに伝わってきます。

そうですね。やはり実務家でなければ気づけないことばかりだと思います。そういったものを本書には詰め込んでいます。

―この本は長谷川先生が現場で気づいたことをメモする「おやっとノート」が元になっているんですよね。もともとはどういうきっかけで「おやっとノート」を書き始めたのでしょうか。

最初はすごくシンプルでした。私が学生の頃の話になりますが、世界を相手に活躍できる仕事をしたいと思っていたので、そのために世界中の人とコミュニケーションを取る手段として何か1つ、新しい言語を覚える必要があるだろうと感じていたんです。それで英語を勉強し始めたんですが、それも学校で教わるような文法とかではなく、いわゆる日常会話としての英語ですね。それを覚えないとコミュニケーションができないんです。
英語を駆使して交渉事をしようとか、自分の意見を明確に伝えるとか、相手の言っていることを明確に分かろうとすると、かなりの英語力が必要になります。でも、英語の中にもいろいろなものがありますよね。例えばビジネスの世界で使われる英語、社交上で使われる英語…。日本語でもそれは同じです。そういったことを嗅ぎ分けることが出来たらいいなということでノートをつけ始めたのが最初です。
それが進展していって、実務をしながらビジネスの世界で通用する原理・原則はないかということで、『おやっ』と感じたことをノートにとるようになった。だから、ビジネスの現場で使われている英語を集めて習得するためにつけ始めたというのがきっかけです。

―「おやっとノート」から本書に掲載する気づきを選ぶとき、その基準みたいなものはあったのでしょうか。

これは、ビジネスのデスクブックを書きたかったんですよ。デスクの脇において、困ったことがあったらすぐに手に取れるような本ですね。そういう内容の本を書くというのがスタートなんです。

―ビジネスの実務における辞書みたいな感覚ですね。

辞書というよりは、“道しるべ”ですね。デスクの脇において参考となるような事例がたくさん載っているので、“道しるべ”として色んな方に使って頂いているというのはとてもありがたいとことですし、嬉しいですね。

人生は「ケ・セラ・セラ」だ

―これまで様々な企業で要職を歴任してきた長谷川先生でいらっしゃいますが、ご自身はどのような基準をもって、仕事を選んできたのでしょうか。

私は業界については一切選ばないですね。業界というのは千差万別、硬いものから軟らかいものまで、もっと細かく言うと食品から精密機械から、宝石業、スーパーもそうですし、本当に幅広くありますよね。
私の仕事はそういう企業が持っている課題を解決するというものですから、その課題の内容によって異なります。私の場合はマーケティングということになるのですが、巷のマーケティング理論とは少し違っていてですね、マーケティングの原点というのは実は1929年にアメリカが大不況に陥り、今の日本で起きていることと同じことが起こったわけです。それはどういうことかというと、市場が縮小してしまったんですね。そこで生み出されたのがマーケティング理論で、つまり、その縮小した市場で企業が生き延びるために考え出された理論なんです。そこで企業が生き延びるために何をしないといけないかというと、どの企業、どの競争相手よりも顧客を知る、ということです。顧客を知って満足させる、というのがマーケティングの原点なんですね。
その話をお聞きいただくと分かると思いますが、マーケティングはどんな企業も、どんな企業の業種も一切関係ないんですよね。その企業が生き延びるために、課題を解決する。それが私の仕事ということでやっているわけです。

―長谷川先生とマーケティングの出会いは、いつごろのことなのでしょうか?

本書にも書いているのですが、実務的には学校を卒業して、最初の企業に入ったときです。そのときの上司にマーケティングに興味を持っている方がいまして、“これから先、企業はモノが売れなくては意味がないんだよ、そのためにマーケティングを研究しなさい”と言われたのがきっかけですね。だから、学校で習ったことではないですね。

―仕事が上手くいかないとき、どのようなことをしてその事態を切り抜けてきましたか?

これはね、非常にシンプルです。“なるようにしかならない”と覚悟を決める、それだけです。“ケ・セラ・セラ”ですね(笑)。30代の頃でしょうか。一時、60キロあった体重が45キロまで減るくらい悩んだ時期がありまして、2年間ずっと睡眠薬を飲まないと眠れないような生活をしていたんです。でも、ある日突然、“こんなことやっていてもしょうがない”と。“ケ・セラ・セラだ”と。そこで開き直ったわけです(笑)。本当にそういう意味では非常にシンプルですよね。

―覚悟を決めた瞬間、やはり世界は違って見えましたか?

そうですね。判断、決断というものが責任をもって出来るようになりました。 もう1つは、来年の今頃は何をしているか、そのときに充実した仕事をするために今、どういう努力をしていたらいいのかということを考えるようになりましたね。落胆することはたくさんありますけど、パッと切り替えて、来年の今頃を充実させるために今、何をすべきかを考えるようになりました。それが毎年毎年連続していくという感じですね。

―長谷川先生がお若い頃、上司から言われた言葉で最も印象的だったものはなんですか?

私は人生のロードマップ、経営者のロードマップみたいなものを作るのが好きなんです。生意気な青二才からいろいろ経験をして、出来るビジネスパーソンになって…というようにね。その生意気な青二才だった頃、上司に言われたのが“お前は鉛筆の先だ”という言葉ですね。
どういうことかというと、“いつも俺をチクチクつついてくる”ということです。これは今でも思い出しますね(笑)。

―これは誉め言葉なんでしょうか(笑)

どうでしょうね(笑)。でもこの言葉はある意味で、私の本質をついていると思います。それにこういうことを言ってくれる人は、こちらも尊敬しますしね。すごく良い関係で仕事が出来ていたと思います。

若いビジネスパーソンに必要な力とは?

長谷川先生写真

若いビジネスパーソンに厳しい目を投げかける長谷川先生。これも一つの優しさなのではないだろうか。

―今の若いビジネスパーソンに最も欠けているものはなんだと思いますか?

一番欠けているのは根気ですね。根気、やる気、創造性、基礎力…それから、もう1つ感じるのは動物的な勘です。加減というか、よく駅のホームで中学生や高校生がふざけあっているのを見るんですが、手加減を知らないんですよね。蹴りを入れても本気というような。私は古武道をやっていたから、親父から“喧嘩は一切してはいけないよ、お前が喧嘩をやったら人の命を奪うことがあるかも知れないんだからね”と言われていました。だから、手加減を知らない彼らを見ると、本当に怖いくらいです。
あと、企業活動の中でも、同じくリスクを感じ取れない人が多いと思いますね。

―では逆に、今の若いビジネスパーソンが昔の方々よりも秀でているところ、良いところはありますか?

うーん…(苦笑)。年寄りの話だからと笑われるかも知れないけど、あまりないんですよね。見つけてあげようと思ったんですが、ないんですよ。

―では、今の若い人が仕事のプロを目指すために、若い頃は何をしておくべきだと思いますか?

自分の進みたい方向に必要な基礎力を徹底的に磨くことだと思います。今、私たちを取り巻く環境は激変しています。この変化は従来の物差しでは計り知れないものなんですね。なので、従来自分たちが備えてきた基礎力では対応できないことが出てきているんですよ。だから新しい環境での基礎力とは何かを研究する必要があります。
私の仕事は、“このような環境の変化でこういったことをしっかり持っていないといけませんよ”と企業に指導させて頂くことなんです。例えば経営計画を書くときも、しっかりした目標の設定ですとか、そのための戦略などを書き込めないと通用しない、そうでないと経営計画書とはいえないんですね。
これまでの静態的なものの考え方で物事を進めたら置き去りにされるだけだと思います。

―長谷川先生は若いビジネスパーソンにどのようなことを望んでいますか?

今、私は70歳なんですが、この70年間にも戦後や1970年代にはオイルショックなど、いろいろなことがありました。今は閉塞感といいますかね、これからどうなるんだろうと不安でいっぱいになっていると思いますが、最終的には“どこにも成功の道がある”ということを信じて努力を続けていくことだと思いますね。
ちょっとステレオタイプになるかも知れませんが、これからの日本の市場というのはもっと縮むと思います。その縮んだ市場でさらに競争になるわけですから、確実に誰かが落ちこぼれますよね。
そうなってくると、今まで日本という国を土俵として考えていたけど、もうちょっと高みに立って、つまり地球を土俵として考えてみる。すると、もちろんいろんな制約がありますよ、国境ですとか法律ですとか。でも、私が20年くらい前にミュンヘン(ドイツ)からバルセロナ(スペイン)まで自動車で移動したことがあったのですが、もう国境がこんなになくなっているのか、と。経済の世界はまさしくそういう風になっているわけです。

―確かに経済は既に国境がないといってもおかしくありません。

だから、私がもうちょっと若ければ、中国は“マイ庭”だと思っているでしょうね(笑)。それにインドは親戚の人の庭かな。つまりどういうことかというと、そういう風に考えることができる国際人を、この10年間に作り上げなくてはいけないと思っているんです。それが今の私の夢ですね。

―では最後に、若い人に本書からどのようなことを読み取って欲しいと思いますか?

物事には原理・原則があるということ、そして、その原理・原則を生活の知恵として持っていると持っていないとでは大きな差があるということです。この本にはそういった日常のビジネスシーンにおける原理・原則がたくさん詰まっていますから、是非そうしたことを読み取って、活かして欲しいですね。

 インタビューを通して、物腰柔らかな喋り方をするのに、その一言一言が鋭く胸に突き刺さってくる印象を受けた。
 これまで2000社もの企業を再生させてきたその手腕と経験に裏打ちされた仕事観は大変参考になるものばかりだった。ここまで厳しく若者を叱ってくれる人はなかなかいない。「今の若いビジネスパーソンで秀でているところはない」と言い切った長谷川先生だが、それは「もっと伸びる」という私たちへのエールなのではないだろうか。
(取材・記事/金井元貴)


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