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Bestseller's Interview 明橋大二

『子育てハッピーアドバイス』
著者:明橋大二
出版社:1万年堂出版
定価(税込み):980円
ISBN-10:4925253212
ISBN-13:978-4925253215

book summary

「『赤ちゃんに抱きぐせをつけてはいけない』は間違い」「叱っていい子と、いけない子がいる」など、子育ての重要ポイントを、マンガやイラストで分かりやすくアドバイスします。100万部突破の“子育てのバイブル”。
「忙しいパパのための 子育てハッピーアドバイス」の特集ページも配信中!→【こちらから】

author profile

■明橋大二さん
昭和34年、大阪府生まれ。
精神科医。 京都大学医学部卒業。 国立京都病院内科、名古屋大学医学部附属病院精神科、愛知県立城山病院をへて、現真生会富山病院心療内科部長。
専門は精神病理学、児童思春期精神医療。
小学校スクールカウンセラー
児童相談所嘱託医
NPO法人 子どもの権利支援センターぱれっと理事長
診療のかたわら、年100回以上の講演活動と執筆活動を行なう。

interview index

1、子育てのキーワードは自己肯定感
2、精神科医なのに子育てに関わるようになったきっかけとは?
3、子育てのポイントは夫婦間の協力
4、取材後記

子育てのキーワードは自己肯定感

―このたび、明橋さんの著書『子育てハッピーアドバイス』が100万部を突破したということですが、ここまで売れることは予想していましたか?

いえいえ、全く思ってなかったですね。びっくりしました。

―子育ての際は、子どもの自己肯定感を育むことが大事だと本書には書かれていましたが、子供の自己肯定感を子育てで作っていく時のポイントはどのようなことでしょうか?

自己肯定感を育むことが大事だということ自体を皆さんが知ることがまず大事なことだと思うんですね。
しつけだとか、学力を伸ばすことが重視されがちですが、それらの土台となるものが自己肯定感です。こういうことは専門家なら常識として昔から知っていたのですが、実際に子どもを育てている親御さんたちがこのことを知っていたかというと、そうではなかったと思うんです。だからこの本が子どもの自己肯定感を育むことの大事さを知っていただくきっかけになったならうれしいですね。

―「子どもの自己肯定感を育む」という言葉や子育ての方法は、徐々に子育ての現場で広まってきていると思いますが、それ以前の子育てではどのようなことが重視されてきたのでしょうか?

しつけとか生活習慣が大事だとか、そういった前提がありましたね。私がいつも言っていることは、全ての土台になるのが自己肯定感で、その上にあるのがしつけ、ということ。
しつけや学力が大事なことは間違いありませんが、それらが身につくかどうかも自己肯定感が持てるかどうかにかかってきます。“自分は大切な人間なんだ”とか“自分は誰かから必要とされている人間なんだ”という気持ちがあってはじめて社会のルールを守ろうとか、勉強しようとかいう気持ちが出てくるわけです。
今の子供の犯罪を見ても、問題の根本はそこにあると思いますね。

―自己肯定感を持てない子どもというのは昔と比べて増えているのでしょうか?

増えていると思います。様々な背景があるのだと思いますが、特に日本は多いのではないでしょうか。ただ、昭和30年代もそうだったかというと、私はそこまで低くはなかったと思うんですよね。よく言われているように偏差値という1つの物差しで評価されるようになってしまったことが原因の一つだと思います。それと、昔は友達同士で遊んでいて、例えば野球するにも面子が必要じゃないですか。そういうところで必要とされるわけですよ。たとえ親の子育てで自己肯定感が育つことがなくても、そういうことで支えられる部分があったわけです。しかし、今は少子化もあってそういう機会が減って、友達と繋がりあうとか友達から必要とされる経験がすごく少なくなっています。
その少ない友達関係で、少し変なことを言ったらKYと言われて排除される。“自分は自分でいいんだ”と思えるような環境が失われていることもすごく大きいと思いますね。

―今、お話に出ましたけども、親の教育で自己肯定感を得られなかった子どもが親以外のどこかからそれを得ることは可能なのでしょうか?

時間はかかりますができると思います。われわれのカウンセリングの仕事もその一つだと思っています。
それと、親子関係、友達関係で自己肯定感を育てられなくても、地域の中やあるいは社会の中でそういうものを支えられる機会はあります。あるいはすごく理解してくれる先生に出会ったことがきっかけになる人もいますね。

精神科医なのに子育てに関わるようになったきっかけとは?

―明橋さんが精神科医でありながら子育てに関する本を書こうと思ったのはなぜだったのでしょうか?

本来は畑違いですよね(笑)自分としても“精神科医が子育ての本を書く時代ってどうなんだろう”と思ったりはします。
私は、元々は子ども専門ではなく大人、特に青年期の患者さんのカウンセリングをしていました。そういう人たちは、最初はイジメに遭ったとか仕事のストレスに関して話すのですが、話を聞いていくうちに実は幼少期にずっと虐待を受けていたとか、あるいは親から殴られていたとか、過去の話に行きつくんですよね。そういう根っこがあって元々生きづらさを抱えているうえにストレスが重なって病気になったんだなという認識があって、精神疾患の予防という意味で、子供時代のカウンセリングに関わるようになっていきました。

―青年期から問題の根を探して遡っていったと。

そうです。それで、小学校のスクールカウンセラーに出たら、そういうサインを出してる子がたくさんいました。でも20歳過ぎてから精神疾患になったら10年がかりで治すくらいの気持ちが必要ですが、小学生だと1年程度で治っていくんです。早期発見、早期対応は効果的だということでそういうケアすることになりました。
ところがある先生に聞いたら小学校じゃ遅い、保育園、幼稚園でもうサインを出している子がいるという話になったんです。そうやって問題を遡るうちに子どもの精神的ストレスの背景には、親の精神的ストレスがあると気づきました。親のストレスに対するケアをしないで、ただ子どもをしっかり見ましょうと言っても余計親にストレスかかるだけで、親を追い詰めることになってしまうんです。それで最終的に子育て支援に行きつきました。

―小学校の子供のサインとはどういった形で表れるのでしょうか?

1つは“キレる”ことでしょうね。ちょっと注意しただけで、病的なまでに怒って暴れたり、パニックになって教室飛び出していくといったような。これまでなら注意して“すいませんでした”で終わっていたのが注意すればするほど余計にひどくなる。そういう行動は心のSOSの可能性があります。あとは学校に行こうとするとお腹が痛くなったり、頭が痛くなったりということもあります。それと、まだ小学生で自分の気持ちを言葉で表現できないということもあるのでしょうが、自分の髪の毛や眉毛を抜いてしまったりする“抜毛癖”に表れることもありますね。

―本書の中で子どもを甘えさせることの大事さについて書かれていましたが、何歳くらいまで必要なのでしょうか?

基本的には10歳までと思っています。それまでは子どもが親にしっかり甘えられる環境があるといいですね。

―そこから後というのは?

10歳、思春期に入るまで充分甘えた子どもは、徐々に親離れしていくもの。そこをさらに甘えさせようとするのは、むしろ親が子どもに甘えていると言えます。思春期に入ってからは少し距離を空けていいと思います。

―子どもを叱るということはとても難しいことかと思いますが、父親と母親で叱り方のポイントは違いますか?

あまり違わないと思っています。ただ体罰は良くありません。特に男性は体育会系の人に多いですが、子どもを叩いたりするのは効果的で必要なことだと思っている人がいます。しかし様々な調査によって、体罰はその時だけは効果的ですが、将来的にみると子どもが反社会的になったり、攻撃的になったり、精神疾患を発症しやすくなったりと、マイナスの面が大きいことがわかっています。母親にも体罰を使う人はいますが、女性は比較的体罰はいけないことという認識を持っている人が多いので、どこかでブレーキがかかります。

―子どもに尊敬される父親っていうのは一体どういう父親なのでしょうか?

耳に痛い質問ですね(笑)父親が子どもと関わるということも大事なのはもちろんですが、実際に子育ての大きな部分を担っているのは母親なんです。だから母親を支えるという姿勢がいいのではないでしょうか。母親の愚痴を聞いたりねぎらうことが大事なのですが、日本の男性はその重要さを認識しているとは言い難いです。

子育てのポイントは夫婦間の協力

―お母さんが生後間もない子どもを虐待してしまったりとか、怪我をさせてしまったりとか、そういう事件が度々報道されますが、親の側から見てそういった問題の大元というのはどこにあると思いますか?

よく講演で親御さんから相談されることが、子どもの自己肯定感を育てないといけないということはわかった、しかし子どもを育てる自分自身の、自己評価や自己肯定感が非常に低いということに気がついた、ということ。“こんな人間が子どもの自己肯定感を育てられるのか?”と考えている親御さんが多いんです。
今の子育て支援の最大の課題はそこにあると思います。子どもの自己肯定感を育てようとする時に、親御さん自身の自己肯定感も大事なんです。親御さん自身の自己肯定感が低いと子育てが大きなプレッシャーとなって育児ノイローゼになったりもしますし、それが限界に達すると“自分などにはとても育てられない”ということで殺してしまったりという事件も出てきてしまうわけです。周りの人に助けを求めていればそこまでには至らないのですが、自己評価が低い親御さんは助けを求めることもできません。“こんなことで助けを求めるなんて恥ずかしい”とか“ダメな人間の証明だ”という風に思ってしまう。ただでさえストレスを抱えているうえに、助けを求めることもできないというのは悪循環だと思いますね。

―父親は子育てをしている奥さんを支えるのが重要ということに関して、子育て以外の家事をうまく分担するにはどうしたらいいのでしょうか。男性からしたら奥さんより自分のほうが大事な仕事をやっているという考えを捨てきれない人が多いのではないかと思いますが。

そういう考えはやはり捨てないといけません。専業主婦がやっていることを全てアウトソーシングしたら年間で約1600万円かかります。年収1600万の仕事を奥さんはタダでしてくれている。家事というのは大事な仕事なんです。
もちろんお父さんも大事な仕事をしているのですが“単なる育児家事だろう”“家にいるから楽でいいだろう”ということではないのです。夜になって仕事から帰ってくると疲れた気がしますがお母さんだって家で仕事をして疲れています。家事に対する意識を変えていくことはすごく大事だと思いますね。

―お母さんになる人は自分のお腹が大きくなっていくわけですし、親になる実感を持ちやすいと思いますが、お父さんになる人はそういった実感を持ちにくいかと思います。子どもが産まれてくるまでに父親になる準備としてやっておいたほうがいいことがありましたら教えてください。

とにかく勉強することですね。男性はやはり実感がないし、必要に迫られないからハンディがあります。親になる準備ということでいうと10ヶ月遅れているわけですから。それを取り戻すためにも自覚を持って学ばないといけませんね。
子ども持つということは1人の人間を育てるという大事な仕事です。母親は“自分なんかに育てられるのか”とプレッシャーを感じる方が多いのと比べて、父親はそれほどの自覚がないんですよね。その意識の差が夫婦喧嘩のタネになったりもします。

―確かに、子育てを巡って喧嘩になるというのはよく耳にしますね。

父親は自分が子育てに十分協力しているという認識があるんですよ。でも奥さんからしたら全然やっていないように思える。その食い違いが喧嘩のタネになるんです。
これは両者の基準が違うことが原因で、父親は自分の父親を基準にしていることが多いですね。昔の父親というと家に帰ってくると大抵ビール飲んでテレビ観てる。子育てをしている奥さんを気遣って家事を手伝っているところなんて見たことがない。それと比べると自分はよく協力していると思えるわけです。そしてそれは確かに事実です。でも奥さんからすると二人の子どもなんだから育児は半分受け持って当然という認識で、そこからすると全然協力してくれないように映る。お互いの認識が違うことで喧嘩になってしまうことが多いですね。

―最後になりますが読者へメッセージがありましたらお願いします。

最近の風潮として結婚自体をしないとか、結婚しても子どもを持たないとか、自分などが子どもを持てるんだろうかと思っている方が多いのかもしれません。それぞれの価値観があるので子どもを持った方がいいとか結婚した方がいいなどと言うつもりはありませんが、子育てをマイナスにしか思っていないなら、それは違います。子どもからもらえるもの、教えられることはたくさんありますし、子どもがいるから頑張れるとか、子どもから新しいアイデアをもらうとか、あるいは毎日仕事でストレスを溜めているけど子どもと遊んでいると癒されることもあります。子どもを持つことで自分の人生が豊かになることもあるということを伝えたいですね。

多忙な中での取材にも、とてもていねいに応じてくださった明橋さん。男性は女性よりも熱心に子育ての勉強をするべきだ、という意見には肯かざるをえなかった。
もうすぐ親になるという人は『子育てハッピーアドバイス』で子育ての予習をしておいてほしいし、そんな予定のない人も今のうちから知識を深めておくのもいいかもしれない。
(取材・記事/山田洋介)


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