話題の著者に聞いた、“ベストセラーの原点”ベストセラーズインタビュー

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鬼神の如く―黒田叛臣伝―

『鬼神の如く―黒田叛臣伝―』

  • 著者: 葉室 麟
  • 出版社: 新潮社
  • 定価: 1600円+税
  • ISBN-10: 4103280131
  • ISBN-13: 978-4103280132
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『鬼神の如く―黒田叛臣伝―』著者 葉室麟さん

出版界の最重要人物にフォーカスする『ベストセラーズインタビュー』!
第72回の今回は、新刊『鬼神の如く―黒田叛臣伝―』(新潮社/刊)を刊行した葉室麟さんが登場してくださいました。
この作品で葉室さんが書いたのは、「仙台騒動」「加賀騒動」と並ぶ江戸時代の「日本三大騒動」の一つである「黒田騒動」。
福岡藩の重臣であった栗山大膳が、主君の黒田忠之を訴えたことで知られるこの騒動ですが、その内実は単純ではありません。当時の江戸幕府や長崎奉行、近隣の藩など、様々な人々の思惑と社会情勢が絡み合うなか、大膳はなぜ主君を告発しなければならなかったのでしょうか?
今回は葉室さんにこの作品の成り立ちや当時の時代背景、そして「歴史」をひも解くことの意味など、さまざまなテーマについて語っていただきました。

interview index

  1.  直木賞作家が描く「黒田騒動」の新たな一面
  2.  戦前生まれの作家にとって「戦争」は大きなテーマだった。
  3.  50代になってから歴史小説を書き始めた理由
  4.  取材後記

直木賞作家が描く「黒田騒動」の新たな一面

― 葉室さんの新刊『鬼神の如く―黒田叛臣伝―』では、元和9年(1623年)から10年ほど続いた「黒田騒動」が、当時福岡藩の家臣だった栗山大膳を中心に書かれています。まず、葉室さんが小説の題材として「黒田騒動」を選んだ理由からお聞かせ願えますか?

著者近影

葉室: 僕は以前に「週刊新潮」で、『橘花抄』という小説を連載していたのですが、これは今回の小説に出てくる福岡藩主・黒田忠之の子どもの黒田光之の時代の話で、地元の福岡では「第二の黒田騒動」と呼ばれているお家騒動を題材にしています。
それを書いていた頃から、いつか本筋の方の「黒田騒動」も書いてみたいとは思っていました。というのも、「黒田騒動」は日本の「三大お家騒動」の一つに挙げられているのですが、一風変わった騒動で、死人が一人も出ていないんですよ。

― 言われてみると、作中でも確かにそうですね。

葉室: 家臣と主君の確執が元になった騒動で、当時の江戸幕府が調べたりもするのですが、その裁定は「黒田家の領地は没収、でも即日返します」というよくわからないものでした。
主君を訴えて騒動を起こした張本人である栗山大膳も、東北の藩に流されはしたものの、罪人扱いではなく、それなりに優遇されて大威張りで暮らしていたとも伝えられています。だから、「めでたしめでたし」で誰も悲劇的な目には遭っていない。それがずっと不思議だったんです。
そんなこともあって、『橘花抄』を書いた後にまた資料を読み返しながら考えていたら、「黒田騒動」単体を見たら誰も死んでいないけれども、少し視野を広げると、竹中妥女正(たけなかうねのしょう)という人のことが見えてきました。
この竹中妥女正という人は、長崎奉行をやっていたような人なのですが、在職中に手酷くキリシタンを弾圧していたこともあって、後の島原の乱にもつながっています。栗山大膳はこの人に対して主君を訴え、それを彼が幕府に取り次いだことで「黒田騒動」は広がっていったのですが、その竹中がちょうど騒動が起きている時期に密貿易の疑いで告発され、結局切腹させられているんです。そして、ほどなくして竹中家も潰れてしまった。
つまり、「黒田騒動」の関係者の中で、訴えを受けた「検事」役だった竹中だけが死んだわけで、彼も含めて書くことで「黒田騒動」の別の面が見えるのではないかと思ったんです。

― 死人が出ないのもそうですが、いわゆる「切った張った」の場面も少ないですね。

葉室: そうなんです。だから、ドラマとしてみると分かりにくいのですが、同時に「謎」の多い騒動でもあります。 黒田騒動とほぼ同時期に同じ九州の加藤家が江戸幕府に改易(大名や旗本から身分を剥奪し、領地や城を没収すること)させられていましたし、その前には安芸広島藩主だった福島正則も、大大名の地位から転落していました。
この加藤家と福島家、そして黒田家には共通点があって、いずれも豊臣秀吉子飼いの大名だったということで、徳川体制になると「外様大名」として幕府から警戒される存在でした。
そんな流れの中で福島が潰れ、加藤が潰れ、「黒田騒動」が起こったわけですから、これは徳川幕府からしたら黒田家を潰す絶好のチャンスだったはずなんです。
しかし、幕府は「昔の功績があるから」という理由で、先ほどお話ししたような妙に温情的な採決をした。この時に何が起こってこういう採決になったのかが謎なんです。
「黒田騒動」以後の歴史の流れを見ても、すぐに島原の乱が起こっています。これは徳川体制になって最初の内乱ですから大変な事態で、そこに黒田は出兵せざるを得ませんでした。それらを考えても、この本で書いた筋立ては実際に起きていたことに近いんじゃないかと思います。

― 「黒田騒動」の謎の部分をフィクションで埋めた、ということですね。

葉室: そうです。書き方としては若干トリッキーだなと思いますが、トリッキーなフィクションを重ねないと、「歴史の真実」のような部分はなかなか見えてきません。この本で書いたことがまったくの事実かどうかはわかりませんが、これに類した何かが起きていたんじゃないかと思っています。

― 戦や戦闘の場面が少ない分、緊張感のある心理戦が物語の軸になっています。

葉室: 江戸幕府と、潰されかけている外様の大名家ですから、実際にも心理戦的な駆け引きは当然あったでしょうね。
「黒田騒動」については地元では「栗山大膳忠臣説」っていうのが昔からあるんですよ。要するに、大膳がその身を呈して主君に反省を促した、と。でも、いくら反省を促すといっても、自分の主君を訴えるというのは一種の内部告発ですから、やり方が荒っぽすぎますよね(笑)。本当に藩が潰れてもおかしくない。現に隣の藩の加藤家が潰れたばかりなのに、同じようなことをやって「これは主君に反省を促すためだ」というのは、現実味が薄いと思いますが、彼が大胆にも主君を訴えた狙いは何だったのかという点は、やはり興味をそそります

― その栗山大膳は、この作品の中では飄々としつつも非常な策略家として書かれています。こうした人物像はどのように作り上げていったのでしょうか?

葉室: 純粋に言えば、私の好みですね(笑)。こういう男がいいなという。
これまでにも、「黒田騒動」や栗山大膳を書いた小説はいくつかあって、たとえば海音寺潮五郎さんが『列藩騒動録』で書いた大膳は、多少衒学的というか、主君の黒田忠之に対して頭ごなしに説教をするような人物で、典型的な口やかましい重臣です。なおかつ、ちょっと傲慢な感じのする人だということを言っていたりする。
実際の大膳も多少そういうところがあったんじゃないかと思っています。というのも、東北に流されてからも、ちょっとした会話の中で「それは間違っている。こうするべきなんだ」と自説を主張して、そこでも説教をしている。どこまでも懲りない人なんですね。
ただ、そういった人物像をそのまま書くと、ただ嫌な感じの人になってしまうので、口やかましくて威張っていると言われるけども、実際は全体のことを考えていて、そのためなら自分を犠牲にすることをいとわない、人から理解されなくても構わないという、「腹をくくっている大人の男」として書きました。

― 宮本武蔵や天草四郎といった歴史上の「有名人」も登場しますね。特に宮本武蔵が出てくることには驚いたのですが、調べてみると実際に「黒田騒動」から「島原の乱」のかけての流れに関係しています。

葉室: そうですね。宮本武蔵は島原の乱の「原城攻め」に関わっていたのですが、そこで足首を挫いたという逸話が伝わっていてちょっと格好悪い(笑)。夢想権之助と戦ったというのも、あくまで伝説ですが言われていることです。

戦前生まれの作家にとって「戦争」は大きなテーマだった。

著者近影

― 歴史から物語を作り上げていくために、どんなことを大事にされていますか?

葉室: 自分ではよくわからないのですが、僕は昔新聞記者をやっていて、取材によって得た事実を積み重ねて真実に迫るということを仕事にしていました。でも、事実というのはいくら積み重ねても「真実」には至らないんだなと思わされることがたびたびあって、実は事実ではなくむしろフィクション的なことを重ね合わせた時に、「真実」に到達できるんじゃないかということを考えるようになったんです。
よく「虚実皮膜の間を縫う」と言いますが、史実にどれだけフィクションを重ねられるかということはいつも心がけています。

― 何か具体的な経験があって、そういった考え方に変わっていったのでしょうか。

葉室: 具体的に何かあったというわけではないのですが、新聞記者の仕事というのは、物事の表面に出てきていることを、ある意味並べるしかないわけです。
たとえば、政治にいろいろな動きがあったとして、それをどんなに調べたところで当事者の心の中まではわかりませんよね。そういう意味での限界は感じていました。

― 直木賞を受賞した『蜩ノ記』をはじめ、歴史を題材に様々な作品を発表されている葉室さんですが、歴史小説を専門に書かれる理由を教えていただけますか?

葉室: 司馬遼太郎さんの読者の世代ですから、司馬さんの作品を通して歴史の面白さを昔から感じていたというのが一つあります。ただ、今は日本人の歴史認識のところに考えがいきますね。
個人的には、日本人の歴史認識は、太平洋戦争の終戦からストップしているように思っています。歴史というのはほとんどの場合、戦いや争い事に「勝った側」が前の世代を規定する形で定められていくわけです。だけど、日本の場合は戦争に負けたので、国内に歴史を定めるべき「勝者」はいません。それもあって「日本の歴史はこうだ」と日本人としての共通の位置づけがされにくくなっている気がしています。だから、いわゆる近現代史的な太平洋戦争についての認識だけではなくて、もっと長いタームでの歴史認識が日本人には必要なんじゃないかという考えもあります。

― 古くから様々な方が歴史を題材に小説を書いています。それぞれの個性というのはどのようなところに表れるのでしょうか。

葉室: 現代の作家さんについては本当に人それぞれとしか言いようがないのですが、僕らの先輩の司馬さんだとか藤沢周平さんのような戦争を経験されている世代の方々が書く歴史小説というのは、僕らが書いているものとはまた違った意味合いがあるのかもしれません。
たとえば司馬さんは昭和の戦争に兵士として行っていましたから、その経験は何だったのだろうかということをずっと問いかけていて、おそらく当時の若い自分への回答として小説を書かれていたんだと思います。
吉川英治さんにしても、戦争についての考え方は戦中と戦後では違っていたはずです。
黒田如水』は戦時中に書かれた作品なんですけど、兵庫の有岡城に囚われていた如水が戸板に乗せられて担ぎ出される場面があります。その時の如水は体がボロボロで、そんな状態でも織田信長の前に出て、「これはすべて国の礎になればいいんです」という話をする。これって、当時戦っていた戦争で捕虜になった兵隊の「模範解答」だったとも取れますよね。
戦前生まれの作家って多かれ少なかれ「戦争協力」せざるを得なかった、これはある意味当然のことだと思います。吉川さんについて言えば『新書太閤記』で豊臣秀吉を書いているのですが、「小牧・長久手の戦い」が終わったあたりでフッと終わっていきます。何が起きたかというと、そこで日本が戦争に負けたんです。

― 終戦によって先が書けなくなってしまった。

葉室: そして、戦後になって書き始めたのが『新・平家物語』だったのですが、これは国が滅びていく物語で、言ってみれば「滅びの美学」のようなものがある。そこに戦後に小説を書いていく活路を見出したんだと思います。
こうした大先達の方々のことを考えると、皆「自分自身は一体何なのか?」という問いかけの下に小説を書いていたと思います。だからというか、僕らもそういう問いかけを持ちながら歴史小説を書くべきなんじゃないかと思いますね。

― 今のお話を踏まえると、葉室さんも含めて戦後生まれの作家の方のほうが自由に歴史小説を書けるのではないですか?

葉室: 本当の意味では自由に書けると思います。戦争が終わるまでの日本の歴史観や国家的な価値観というのは明治以降に作られたものですよね。江戸時代が終わって明治になって、そこからは簡単に言えばヨーロッパみたいになりたくてあらゆるものを人工的に作ってきた。そういう時代を通してできあがってきた国家観が敗戦によって崩壊したわけです。
ただ、崩壊したといっても、戦前の人はたくさん生き残っていましたよね。総理大臣になる吉田茂もそうです。岸信介なんて満州の高級官僚でしたから。そういうところで戦前の価値観というのは敗戦後も保存されていましたから、自由だったかというとそうではなかったです。
僕らが歴史に関して多少なりとも自由に考えられるようになったのは、平成になってからでしょうね。昭和天皇がご存命なのに、戦時中や戦前のことを「歴史」として語れるかといったら語れないでしょう。それは単に「戦争責任」の話ではなくて、もっと別の様々な意味からいってもそうです。

50代になってから歴史小説を書き始めた理由

― 50代になってから小説を書き始めたとうかがいましたが、きっかけはどんなことだったのでしょうか。

葉室: 定年が近づいてくると「人生の残り時間」を考えるようになりますから、「何か書き残しておきたい」という衝動が自然に生まれてくるんですよ。だから、小説を書き始めたのは年齢的なものが大きかったと思います。
もっと若い頃は純文学の小説を書いたりしていて、「文學界」や「群像」の賞に応募したりしていました。だいたい二次選考くらいまでは行くんだけど三次選考にはいかない。そういうことが続くと、これをやっていてもしょうがないなとなって一度は小説から離れたのですが、50代になってからまた書くようになって、今度は歴史を題材にするようになりました。やはりそのくらいの年齢になると過去が気になってくるんですよ、自分自身の過去も含めて。歴史を振り返ることへの感心が高まって、「あれはどうだったんだろう?」ということに自分なりの回答を出したくなる。それはおそらくどなたでもそうだと思います。振り返るやり方は色々あって、小説とは限りませんが。

― 今後、小説の中で取り上げてみたい歴史的な題材がありましたら教えていただきたいです。

葉室: 今年の末くらいから「西郷隆盛」についての小説を書き始める予定です。
僕は明治維新の総括が必要だと考えているのですが、明治維新を最初から最後まで体験したのは西郷しかいないんです。他の人は途中で死んでしまったりするし、NHK大河ドラマの『花燃ゆ』に出てくる長州藩にしても、出てきたのは安政の大獄以降ですからね。
それ以前から辿らないと明治維新の本当の姿は見えてこないと思うのですが、安政の大獄以前から何かをやっていたのは薩摩藩や水戸藩、人物でいえば西郷隆盛くらいなんです。
今はその準備をしているのですが、一度で西郷さんを全部書き切るのは難しいので何回かに分けてと思っています。

― 人生で影響を受けた本がありましたら、3冊ほどご紹介いただけますか?

葉室: 一つめは漫画で、白土三平さんの『忍者武芸帳 影丸伝』です。
これは戦国時代が舞台になっているんですけど、歴史観が独特で、戦国時代の最後は戦国大名のチャンピオンである織田信長と、一揆勢力のチャンピオンとしての一向宗本願寺勢力との対決で、どちらが勝ったかによってその後の日本の歴史が決まったのだという完全な階級闘争史観なんですよ。
白土さんは、お父さんがプロレタリア画家で、共産党と近い位置にいたので、その影響を受けているのだと思うのですが、今考えると子どもに読んで理解できたのだろうかと思います(笑)。
二冊目は、司馬さんの『竜馬がゆく』ですね。これは先ほども話に出ましたが、歴史の面白さに気づかせてくれたところがあります。
三冊目は小林秀雄さんの『モオツァルト』を挙げておきます。昔から小林さんの評論が好きだったんですけど、最近また読み返しています。小林さんも戦争を経験した世代の人ですが、そこからヨーロッパ的な文学の方面で頂点に立ちました。ただ、どうも日本の古典に戻らないといけないと考えていたふしがあって、それが『本居宣長』という最後の仕事につながる。物事を考えることの大切さは小林さんの評論に教えられたところがあります。

― 最後になりますが、読者の方々にメッセージをいただければと思います。

葉室: 昔の人の名前が出てきてややこしかったり、説明が多くて退屈したりと、歴史小説は人によっては苦手意識を持ったり食わず嫌いしてしまうところがありますが、ちょっと我慢して読み進めてみていただければ、我慢しただけの面白さが味わえるはずです。
今、本は「作品」というよりも「商品」になってしまっていて、いかに自分が気持ちよくなれるかという方向に寄ってしまっていますが、辛抱して読むことで後から面白くなってくるという読書もあるので、食わず嫌いにならないでいただきたいですね。

取材後記

歴史とは「歴史の授業」で習うような直線的なものではなく、無数のひだがあり、そこには物語が隠されている。そして、どの角度から光を当てるかによって、時間や人間関係においてどこまでを切り取るかによって、その物語の見え方は変化するものだと葉室さんの小説は教えてくれる。
単純な時系列から、角度によって様相が変わる多面体へ。『鬼神の如く―黒田叛臣伝―』はきっとあなたの歴史の見方を変えてくれるはずだ。
(インタビュー・記事/山田洋介)

葉室麟さんが選ぶ3冊

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『忍者武芸帳 影丸伝』
著者: 白土 三平
出版社: 小学館クリエイティブ
価格: 1,143円+税
ISBN-10: 4778060016
ISBN-13: 978-4778060015
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『竜馬がゆく』
著者: 司馬 遼太郎
出版社: 文藝春秋
価格: 514円+税
ISBN-10: 4167105675
ISBN-13: 978-4167105679
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『モオツァルト』
著者: 小林秀雄
出版社: 新潮社
ISBN-10: 4101007047
ISBN-13: 978-4101007045
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プロフィール

■ 葉室麟さん

1951年、北九州市小倉生まれ。西南学院大学卒業後、地方紙記者などを経て2005年『乾山晩愁』で歴史文学賞を受賞し、作家デビュー。2007年『銀漢の賦』で松本清張賞を、2012年『蜩ノ記』で直木賞を受賞。「地方の視点から歴史を描く」を信条に、逆境にあっても志を貫く人々の物語を描きつづけている。他に『いのちなりけり』『秋月記』『橘花抄』『春風伝』『蒼天見ゆ』など著作多数。 (出版社サイトより)

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『鬼神の如く―黒田叛臣伝―』
著者: 葉室 麟
出版社: 新潮社
定価: 1600円+税
ISBN-10: 4103280131
ISBN-13: 978-4103280132

あらすじ

「謀反の疑いあり」――黒田家家老・栗山大膳は、虎視眈々と大名家の取り潰しを狙う幕府の次なる標的は自藩だと悟りながら、主君を訴えた。九州の覇権を狙う細川家、ルソン出兵を志す将軍・家光、そして藩主・黒田忠之に命を追われるなか、不敵に振る舞い続ける大膳の真意とは? 黒田騒動を舞台にまことの忠義と武士の一徹を描く本格歴史長篇。(出版社サイトより)

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